暴力団の生き残りをかけた戦いが、熾烈(しれつ)さを増している。公安や警察は暴力団の「自壊」を狙い、取り締まりを強化。一部の組では組員の高齢化も進む。反社会的勢力に詳しい筆者は、離脱者の就労支援が最後の重要な切り札になると説く。(エス・ピー・ネットワーク取締役副社長 首席研究員 芳賀恒人)
特定抗争指定暴力団への指定が持つ意味
12月8日、岡山県・兵庫県・愛知県・三重県の公安委員会は、池田組と六代目山口組をより厳しく取り締まる「特定抗争指定暴力団」に指定した。
2022年10月に岡山市北区の理髪店で、散髪中の池田組の組長が襲われ、同日夜には組長が住むマンションの駐車場で発砲事件が発生。いずれも六代目山口組系の暴力団員が逮捕されるなど、今年に入って市内で抗争事件が相次ぎ、池田組の本部がある岡山県、六代目山口組の総本部がある兵庫県、それに愛知県と三重県の公安委員会が、「抗争が激化していて市民が事件に巻き込まれる恐れがある」と判断したからだ。
これに伴い、岡山市・神戸市・名古屋市・桑名市が「警戒区域」に指定され、構成員がおおむね5人以上で集まることや、事務所に立ち入ることなどが禁じられ、違反した場合、警察は逮捕することができるように。これを受けて六代目山口組や神戸山口組では、新幹線での移動で同じ列車やホームに5人以上重ならないよう、スケジュールの調整に気を使っているという。
特定抗争指定暴力団の指定は、今回が全国で3例目となる。12年に改正暴力団対策法に規定が設けられ、同年末、九州に拠点を置く道仁会と九州誠道会(現浪川会)が全国で初めて指定された(その後、抗争が沈静化したと判断され、14年に解除された)。また、六代目山口組は20年1月から、神戸山口組との間で抗争状態にあるとして、特定抗争指定暴力団に指定されてもいる。