生産拠点を中国から他のアジア新興国などに分散する企業が増えている。JETROによると、2021年、中国の製造業作業員の月額基本給は651ドル(約8万8000円)。対して、インドネシアは360ドル(約4万9000円)、インドは316ドル(約4万3000円)、ベトナムは265ドル(約3万6000円)。バングラデシュは105ドル(約1万4000円)とさらに低い。企業がコストカットを進めるためには、労働コストが低いASEAN地域などでの事業運営体制の強化が、これまで以上に重要となっている。また、習近平政権の台湾侵攻の可能性など、地政学リスクも無視できないファクターである。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
中国依存度を下げるため事業運営を見直し
最近、中国に見切りをつけて出て行く企業が増加している。わが国企業でも、アパレル業界をはじめ複数の業界で生産拠点を東南アジアなどに移す企業が増えている。世界的に見ても、米国や欧州の企業も中国依存度を下げるため事業運営を見直している。
その背景には、中国経済の成長率の低下や生産コスト増加などの構造変化がある。中国の生産年齢人口は既に減少局面に入っている。これまでのように、中国が労働コストの低さを武器にするのは限界を迎えている。
加えて、習近平政権の強引ともいえる台湾に対する姿勢は、一段と緊迫感を高めている。また、先端分野における米中の対立も激化する可能性が高い。いずれも短期間で解決されることは考えづらい。共産党政権の社会、経済政策運営の先行き不透明感により、海外企業を中心に、中国における設備投資が一段と不安定に推移するものと予想される。