中国の厳しいゼロコロナ対策に抗議する北京の市民たち中国の厳しいゼロコロナ政策に抗議する北京の市民たち Photo:Kevin Frayer/gettyimages

中国共産党に対する国民からの批判と経済の悪化が止まらない。その象徴的な事象が、河南省のフォックスコン工場の労働争議だ。同社は世界のiPhone需要を満たすため、従業員に長時間労働などを強いてきた上に、ゼロコロナ政策が加わり、従業員の不満が爆発。生産は大きく落ち込んだ。米国の年末商戦を迎える中で、ハイエンドのiPhone需要を取りこぼすと、中国の対米輸出は減少するだろう。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

国民の不満に習近平政権も譲歩せざるを得ない

 最近、中国では、異例ともいえる共産党政権に対する批判がSNS上で拡散しているという。不動産バブルの崩壊やゼロコロナ政策に対する、国民の不満はかなり蓄積していることは間違いない。中国経済はかなり厳しい状況に追い込まれつつある。

 12月5日から中国人民銀行(中央銀行)は、預金準備率をさらに引き下げた。預金準備率引き下げは、2022年4月に上海市がロックダウンされた時に続く措置だ。共産党指導部は急速に雇用・所得環境が悪化する展開に、危機感を持ち始めているのかもしれない。

 ゼロコロナ政策の長期化に対する人々の不満や抗議も激化した。人海戦術によるSNS投稿の取り締まり強化にもかかわらず、共産党政権を批判する動画などが次々にアップされている。こうした状況は、これまでの中国ではあまり見られなかった。人々の不満に、習近平政権も徐々に譲歩せざるを得なくなっているようだ。

 今後の注目点は、習政権がどのように国民の不満を和らげながら、経済を立て直す政策運営を行うかだ。ただ、政権内部には、政策運営の実績を持った人材が見当たらない。一党独裁体制を維持するため、国民に広範な自由を認めることも想定しづらい。

 中国の経済・社会運営の困難さは増すだろう。状況によっては米国経済が想定以上に落ち込み、それと同時に中国の景気が後退して世界経済が足を引っ張られるシナリオも排除できない。