コロナショックを経て、人々が企業を見る目や意識、姿勢が大きく変化し、これまでよりもさらに誠実であることを求めている。また企業が、悪意はなくても勉強不足や想像力の欠如によって人権を侵害し、大炎上するケースも増えている。何に気をつけるべきなのか。本連載では、注目を集める企業の人権違反とその対応策について紹介する。連載1回目で取り上げるのは新疆ウイグル自治区の強制収容、強制労働問題について。日本企業も実は、ある側面では、この人権侵害を助長しかねない。果たしてどういうことなのだろうか。(オウルズコンサルティンググループ代表取締役CEO 羽生田慶介)
ウイグル問題で日本企業12社に疑惑
ユニクロは○でパナソニックは×の理由
「吐き気をもよおす、はなはだしい(gross and egregious)人権侵害が、新彊ウイグル自治区で起きている」――。
2020年7月、英国のドミニク・ラーブ国務大臣・外務大臣はこんな言葉を発した。
同じく7月には、米ニュージャージー州にあるニューアークの港で、新疆ウイグル自治区から発送された貨物から、人の毛髪から作ったと思われる付け毛やかつらやなど13トンが、米税関・国境警備局(CBP)に押収された。新疆ウイグル自治区の強制収容所などで、強制労働によって製造されたとの疑いを受けた措置だ。
新疆ウイグル自治区では、大勢のイスラム教徒(主にウイグル人)が、中国共産党の“再教育”キャンプに強制収容されているという。中には強制的に不妊手術などを受けさせられるような人権侵害が行われ、収容されたウイグル人による強制労働で多くの製品が作られているという事実も各国で報じられている。
20年7月19日には、英BBCの番組「アンドリュー・マー・ショー」に、中国の劉暁明駐英大使が出演。ウイグル人強制連行の映像を見せると、劉大使はとぼけたり、逆ギレしたりして、世界中からさらに疑念を深める結果となった。
米国の商務省産業安全保障局(BIS)は翌7月20日、新疆ウイグル自治区における大規模なウイグル人拘留や強制労働、もしくは生体認証データや遺伝情報の強制収集、解析などに関わった中国企業11社を、輸出管理規則(EAR)に基づくエンティティーリストに新たに載せ、事実上の禁輸措置を発令した。エンティティーリストとは、商務省が管理する、米国の安全保障・外交政策上の利益に反する顧客などのリストのこと。これに載った企業へ米国製品を輸出するには、事前許可が必要になる。
「新彊ウイグル」は今、グローバルビジネスにおいて、極めてセンシティブな地名となっている。