行動制限が解除され、入国制限も大きく緩和されるなど、人々の生活は少しずつ「コロナ前」に戻りつつある。だが、一難去ってまた一難。ビジネスの世界では、円安や資材高が多くの企業を混乱の渦に巻き込んでいる。その状況下で、好決算を記録した企業とそうでない企業の差は何だったのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は第一生命ホールディングス、かんぽ生命保険、T&Dホールディングスの「生命保険」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
第一生命・T&Dが2桁増収
かんぽ生命は不振脱却も利益面は…
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の生命保険業界の3社。対象期間は22年5~9月の四半期(3社いずれも22年7~9月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・第一生命ホールディングス
増収率:50.9%(四半期の経常収益2兆7474億円)
・かんぽ生命保険
増収率:2.1%(四半期の経常収益1兆5935億円)
・T&Dホールディングス
増収率:38.5%(四半期の経常収益7445億円)
生命保険業界の3社では、第一生命ホールディングスが5割超、T&Dホールディングスが4割弱と驚異的な四半期増収率を記録した。
かんぽ生命保険は四半期増収率が2%台と低いが、不祥事が響いて「13四半期連続」で減収に陥っていた状況から、実に14四半期ぶりに増収に転じた。
前四半期の記事でも解説した通り、かんぽ生命保険の長期的な不振の背景には、19年に発覚した「保険の不適切販売問題」があった。同社では不祥事の「みそぎ」として同年7月から約2年弱にわたって営業活動を自粛し、21年4月から本格的に再開した。だが、再開から1年以上がたっても、同社の業績は下降の一途をたどっていた。
今回分析対象とした四半期を除くと、かんぽ生命保険が最後に四半期増収(前年同期比)を達成したのは、「不祥事発覚前」の19年1~3月期(19年3月期第4四半期)だった。
こうした状況を一見すると、第一生命ホールディングスとT&Dホールディングスは絶好調で、かんぽ生命保険は復活を果たしたように思える。
だが、22年4~9月期累計の利益面に着目すると、3社はそろって「大減益」に陥っている。しかも、T&Dホールディングスは経常損益・最終損益ともに赤字である。
かんぽ生命保険が久しぶりに増収を成し遂げた要因は何なのか。なぜ3社そろって大減益となってしまったのか。次ページでは、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、これら2点について詳しく解説する。