1万人を接客した美容部員が教える「30代からメイクが急に似合わなくなる」の正体

現役美容部員のBAパンダさんが、幼なじみのマンガ家吉川景都さんにメイクを教える『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』。「メイクをこんなふうに、友達に教えてほしかった!」「まさに求めていた本!」と読者から圧倒的な共感を獲得、テレビ、ラジオ、SNSなどで話題の美容マンガです。
メイク方法は何も変えていないはずなのに、なぜか違和感……。似合わなくなってきた気がするけど、その原因がわからない。そんな「アラサー以降、メイクがなんとなく変」問題、どう解決したらいいのでしょう。
今回はBAパンダさんに、30代以降、メイクがなんとなく変になる理由について、聞いてみました!(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

アラサー以降のメイクの違和感、原因は?

──「いちばん綺麗に見える!」と思っていた自分なりのベストメイクが、なんとなく合わなくなってきた気がする、という悩み……。よくある原因は何でしょうか? 私も、今年30歳になったんですけど、急に違和感が出てきて。でも、その違和感の正体がわからないんです。

BAパンダ:アラサーになって、「メイクがなんとなく変」と感じることが増えた……という人は、かなり多いと思います。私がコスメカウンターで美容部員として働いているときも、そういうご相談をいただく頻度は高いですね。

──これまで1万人以上の接客経験があるパンダさんですが、この違和感の正体は何だと思いますか。

BAパンダ:大きく分けて3つのパターンが考えられると思います。

①服とのミスマッチング

 まず、ファッションとのミスマッチが起きているパターンです。

 10年前と同じ服は着ないのに、メイクだけは10年前とずっと同じ、という人、意外と多いんですよ。

──ドキッ!! 私、まさにこれかもしれません。

BAパンダ:洋服に流行があるように、メイクにも流行がありますからね。自分のメイクに「今っぽさ」を感じないから、「なんとなく変」に思えるのかもしれません。

 たとえば、「なんとなく古い/今っぽい」に一番影響しやすいのは、アイメイク。私や吉川さんも含め、今の30代、40代がメイクのやり方をはじめて知った10代の頃は、とにかく「デカ目メイク」が大流行してたじゃないですか。だから、その当時にしっくりきたやり方を更新していなくて、そのせいで、違和感がある……というケースも多いかもしれないですね。

──たしかに。「とにかく少しでも目を大きく」という思い込み。

BAパンダ:本の中にも書きましたが、メイクを学び直すときには、「デカ目信仰をやめる」ところから始めるといいですよ。「大きく見せる」じゃなく、「魅力的に見せる」ためにどうすればいいか? と考えると、違和感も少なくなるかも。

②求められる形が変わった

BAパンダ:あとは、「求められる形が変わった」から、「なんとなく変」に感じるようになった、というパターンも多いはず。

──求められる形が変わった?

BAパンダ:はい。数年経てば、仕事でもプライベートでも、自分の立ち位置って変わりますよね。たとえば、仕事でより責任ある仕事を任されるようになったとか、人間関係が変わったとか。

──たしかに。

BAパンダ:ステータスや環境に変化が生まれれば、出かける場所も、人間関係も自然と変わっていきますよね。TPOに合わせて、実は「周りに何を求められるか」「周りからの見られ方」も変わっているはずなんです。

──言われてみれば。新入社員の頃は薄いメイクでよかったけど、後輩も増えてきたし、同じメイクだと頼りない感じに見えちゃうな……ということもありますもんね。

③気持ち、好み、価値観が変わった

BAパンダ:そうなんです。あとは、実は一番重要なのが、「自分の価値観」。

 自分の気持ちの変化に気づいてなくて、それで「なんとなく変」の理由を言語化できていない、という人は多い気がします。

 たとえば、「かわいい」の価値観、好みも変わっているはずなんですよ。10年前とまったく同じ人を今もかわいいと思い続けているかっていうと、たぶん、ほとんどの人は違う。

 たとえば、タレントさんにしても、10年間ずっと同じ人を、憧れとして追いかけ続けるって、なかなかないですよね?

──なんとなく、自分の好みってずっと変わらないような気がしてましたけど、言われてみれば……。

BAパンダ:10年前に好きだったタレントさん、女優さんは誰だったっけ? って思い返してみるのもいいかも。そこに、違和感の正体が隠れてるかもしれません。

メイクを楽しむために大事なのは「納得感」

──『メイクがなんとなく変なので』を読んでも感じたことですが、パンダさんは、メイク単体ではなく、服装、暮らし、TPOなどなど、すべて総合的に分析して言語化されていますよね。ズバッと本質をついたことを言ってくださるので、いつもすごく納得感があります。

BAパンダ:価値観も、洋服も、メイクも、全部つながってるんですよ。私が普段美容部員としてやっているのも、お客様のかわりに、お気持ちを言語化してあげる仕事なんです。

──たとえば、どんなふうに言語化していくんですか?

BAパンダ:まずは「嫌い」を探す作業をします。

──嫌いを探す。

BAパンダ:「好き」はわからなくても「嫌い」はわかる。そういう人の方が多いんです。「なんとなく変」で、自分にしっくりくるものを見つけたいと思っているけど、どこからどう変えればいいかわからない。そんなお悩みをお持ちの方に、「どんなふうになりたいですか?」「どういうメイクがしたいですか?」という「好き」にベクトルが向いた質問をぶつけても、出てこないんですよ。

──たしかに! なりたいイメージありますか? と聞かれて困ったことあります。

BAパンダ:もちろん、明確に持っていらっしゃる方もいますけどね。そうでない場合は、「嫌い」を先に見つけた方がいいんです。

 なので、私は最初に、「嫌いなメイクはありますか?」「これは絶対にやりたくない、というものはありますか?」という聞き方をするようにしています。代表的なものでいえば、「赤いリップはどうしても苦手です」みたいに、避けたいものが出てくる。嫌いなコスメって、たとえトレンドど真ん中でも、客観的にはその人にすごく似合っているように見えても、買った次の日、つけたいと思えないんですよ。

──家で塗ってみたらしっくりこなくて後悔するとか、あるあるですよね。

BAパンダ:そうそう。結局、他人にゴリ押しされたものって、あとから冷静になって、使いたくなくなるじゃないですか。だから、「私は自分でこれを選んだ」と感じることが大事なんです。

 なので、最初に嫌いなものを聞いて、そのあと、

・普段、洋服は何を着るか
・何を着ることが多いか
・ブラウスかTシャツなら?
・スカートかパンツなら?
・スニーカーかパンプスなら?

 というように、どんどん服装についても掘り下げて、お客様の「メイクがなんとなく変」という気持ちがどこで生じているのか、探っていくんです。

 たとえば、今度ネイビーのドレスを着る予定で、それに合うものがほしい、というリクエストをいただいたら、「お嫌いな色以外でネイビーに合うのはこれ、ポイントはここに置きましょう。アイメイクはこの色で、この形だと、今日のお召し物にもお似合いで、普段使いもしやすいですよ」というように、理由をきちんと説明するようにしています。

 どれだけ完璧なメイクでも、洋服やヘアスタイルと合わないと、「何かが変だけど何が変なのかわからない」につながりやすいので。そこまで言語化できれば、納得して使える。ただ「かわいいです」「きれいです」だけでは、心から納得しては使えないですよね。

──ある意味、消去法的に掘り下げていくんですね。

BAパンダ:自分の好みを言語化する方法はいろいろありますが、消去法は手段の一つとして、有効だと思います。

「なんとなく変」なのは、なんとなく使っているからなんですよ。好きか嫌いか、理由もあいまい。それもわからず、「流行している色だから」とかで使っていると、納得性がない。

 とくに、アラサー以降になると、目も肥えて、ある程度俯瞰でものが見られるようになってきます。メイクをはじめたての学生時代とか、20歳くらいときは、はじめての化粧品でテンションが上がっているから、「アイテムがかわいい!」だけで完結してた。

 ジェルライナーって、何これ! すごい! って、それだけでテンションが上がって、メイクを楽しむことができた。

 でも30代って、いろいろ経験も積んでいるから、無意識のうちに「好き・嫌い」の価値観が出来上がってるんですよ。わかるはずなのに、言語化できてないだけなんです。

 なんとなくメイクするのをやめて「そのアイテムを使う理由」とちょっとしたコツを知れば、「なんとなく変」は解決します。そのヒントを、この本でご提案できたらうれしいですね。

1万人を接客した美容部員が教える「30代からメイクが急に似合わなくなる」の正体BAパンダ(びーえーぱんだ)  大手化粧品会社の現役美容部員
BA歴10年、現在2社目。これまで接客してきたお客様はのべ1万人以上。お客様の「なりたい自分」に合わせて商品や使い方を提案するように心がけている。吉川景都とは小学校時代の幼なじみで、30年来の友人。

吉川景都(よしかわ けいと)  マンガ家
2003年少女誌『LaLa』(白泉社) でデビュー。著書に『片桐くん家に猫がいる』『子育てビフォーアフター』(新潮社) 、『鬼を飼う』『こまったやつら』(少年画報社) などがある。メイクは好きだが、キラキラ美容部員さんのいるコスメカウンターは怖かった。アラフォーになり、「顔面迷子」状態の日々。
1万人を接客した美容部員が教える「30代からメイクが急に似合わなくなる」の正体