「ネットで調べれば正しい情報は何でも見つけられる」。そう思っている人もいるでしょう。しかし、検索ですぐ見つかるような情報は、他の誰かと同じ答えにすぎず、自分らしさや付加価値はありません。そのため、自分の頭で深く思考し、独自の視点で斬新なアイデアを発案できる人材がいま強く求められています。
そこで今回は、手書きのメモで思考を深める極意を明かした『考える人のメモの技術』の著者・下地寛也さんをお招きし、効率のいいインプット法や問題解決のメソッドについて語っていただいた、本書刊行記念セミナー(ダイヤモンド社「The Salon」主催)の講演とQ&Aセッションの模様を全2回のダイジェストでお届けします。(構成/根本隼)
メモは用途ごとに分けて管理する
下地寛也 実は、ノートやメモを取る目的は、大きく分けて以下の3つあるんです。
●記録用…仕事の締め切りやプライベートの予定など、備忘録として記録するためのメモ
●インプット用…「これは参考になる」と思った情報を自分の知見として残しておくためのメモ
●アウトプット用…大事なことを考えたり、情報を整理したりして、新しいアイデアや企画につなげるためのメモ
「自分の頭で考える力」をつけるためには、これら3種類のメモの目的を意識して、できればそれぞれ別のノートに分けて取ることをおススメしています。
この区別をせず、全てのメモをまとめて1冊のノートに書き込んでしまうと、どのページに何を書いたのか把握できなくなります。多くの人が、この使い分けをあまり意識できていません。
特に、記録用のノートの中に、大事なインプット情報をメモするのは絶対NGです。せっかくメモした大切な情報が他の雑多な備忘録に紛れて、どこに書いたのかわからなくなってしまいます。必要に応じていつでも参照できるように、インプットメモは小さくて愛着が持てるノートにして、常に携帯しましょう。
PRではないですがコクヨの測量野帳はインプットメモとして丁度いいです。サイズが小さいながらも背表紙が固く、立ったままメモできる昔からある定番のメモ帳です。
インプットメモには「気づき」を加える
インプットメモで重要なポイントは、手に入れた事実・情報だけでなく、「気づき」を書き加えることです。情報に気づきが加わると「自分ごと」になって、記憶に残りやすいからです。
情報は「客観的な事実」ですが、気づきは「主観・個人の見解」です。正解も間違いもないので、意見や感想など思ったことを自由に書いてみてください。
ただし、インプットメモは何度も見返しますし、自分にとって大切な言葉の集大成になるので、なるべく丁寧に書きましょう。
一方のアウトプットメモは、後に企画書などを作るための土台にすぎないので、殴り書きでも構いませんが、全体像を一覧できるようにA4サイズなどの大きめのノートを使い1枚にまとめて書くようにしましょう。
急に話を振られても「核心」をズバッと捉えられる
メモの習慣を1年ほど続けると、思考力が飛躍的に高まります。なぜならば、数多くある情報の中から大切と思う情報を選び取り、それに気づきという自分の考えを加える力がつくからです。そうすると、会議で急に話を振られても、自分の言葉でちゃんと意見を言えるようになります。
思考力は、生まれつきの才能で決まるのではなく、日々の訓練を通じて身につけられるものです。私の経験を振り返っても、組織の中で出世していく人は、常にメモを書きながら仕事をしている人が多く、そういった積み重ねにより考える力を着実に伸ばしていました。