「ステルス値上げ」は炎上必至、消費者も納得する値上げの極意とは画像はイメージです。Photo:PIXTA

「実質値上げ=ステルス値上げ」という認識は
実は誤解である

 去る11月、「サクマ式ドロップス」を販売する佐久間製菓が2023年1月20日で廃業すると発表した。理由の一つが、多くのメーカーの頭を悩ませる原材料高だ。

 価格競争力を高めるため、値引きや価格維持に固執してきたメーカーは、いわゆる“企業努力”でコストを吸収してきた。しかしコストが右肩上がりの現状では、メーカー側も値上げするマインドに切り替えなければ身を滅ぼしかねない状況といえるだろう。

 とはいえ、値上げへの転換には幾重ものハードルがある。価格が上がれば、消費者は誰しも財布が痛む。消費者の声に敏感に反応する小売りの存在も、メーカー側からすれば大きな懸念材料だ。

 コスト上昇と値上げに対する反発。値上げしたくとも、そう簡単にはできない立場。そうして板挟みとなったメーカーの、苦肉の策として生まれたのが「実質値上げ(シュリンクフレーション)」である。

 実質値上げとは、内容量を減らして価格を据え置くことで、一見価格は変わっていないように見せながら、量当たりの単価を値上げする方法だ。これにより、消費者や小売りの反発を最小限にし、コストを売値に転嫁することができる。

 読者の中には、ここで述べた実質値上げ(内容量を減らして価格を据え置くこと)を「ステルス値上げ」と混同している人も多いだろう。実は、その解釈は誤っている。

 ステルス値上げは、実質値上げの中でも、消費者側に告知をせず「こっそりと行う値上げ」を指す言葉だ。それは、ステルス(英語: stealth)という単語が持つ「隠密」「こっそり行う」という意味からも明らかだ。

 逆に言えば、「内容量を減らして価格を据え置きます」と堂々と宣言して容量を減らすケースは実質値上げにすぎず、ステルス値上げには当てはまらないといえる。