「セコい」「ずるい」…
ネットで炎上繰り返すステルス値上げ

“こっそりと行われる”ステルス値上げに対しては、消費者は不信感や反感を抱きやすい。暴露や炎上が世をにぎわす時代の中で、「企業は誠実であり潔白であるべきだ」という考え方は、より論を強めているように思う。

 現に先日、大手コンビニエンスストアの弁当の内容量が大幅に減ったことを嘆く購入者のツイートが5.8万もの「いいね」を集め、メーカーに対する批判の声があふれた。

 一部には「仕方がない」と同情する声が上がったものの、メーカー側から事前の発表がないこともあり、「セコい」「ずるい」といった意見が大半を占めた。

  中には「いっそのこと(純粋に)値上げしてほしい」といった声もあり、ステルス値上げに対しては多くの消費者が嫌悪感を抱いていることがわかる。

 インターネット上ではこうした投稿をいくらでも見つけることができる。先ほどとは異なる大手コンビニエンスストアに対しても、ステルス値上げを疑うツイートが話題を呼んだ。

 同じ日に同じ店舗で同じ商品を購入したという投稿には、値段は変わっていないにもかかわらず、明らかにサイズの大小が異なるサンドイッチが並んでいる。

 販売元が詳細を明かしていないため、これが製造工程上やむを得ないばらつきなのか、ステルス値上げなのかは定かではない。

「ステルス値上げ」は炎上必至、消費者も納得する値上げの極意とは画像提供:Twitterユーザーの「Mつる」さん

 とはいえ、ここまで露骨にサイズに差があると、「ステルス値上げをしているのではないか」と顧客が不信感や疑問を抱くのも仕方ないだろう。

ステルス値上げが許容されうる
ポイントとは?

 このように、ステルス値上げは炎上のリスクが高い一方で、意外にも許容されやすい場合もある。その一つは「年齢」だ。筆者が行った「ステルス値上げの許容度に関する調査」によると、年代によってその許容度が異なることが明らかになった。

 ステルス値上げに敏感に反応したのは、26~35歳のミレニアル世代で、結婚したり子育てをスタートしたりと世帯を持ち始める世代と重なる。つまりは消費財の主要ターゲット層だ。身の回りの消費財や日用品で値上げが続くとなれば家計への影響は避けられない。

 また、年齢的に収入にもさほど余裕がないとなれば、批判の矛先がメーカーに向くことは容易に想像できる。逆を言えば、この世代がメインターゲットでない商材であれば、ステルス値上げをしてもある程度は受け入れられる可能性があるといえるだろう。

「ステルス値上げ」は炎上必至、消費者も納得する値上げの極意とは

 実際、36~45歳、46歳以上と年齢が上がるごとに、ステルス値上げを「不快に思う」人は減り、「仕方がないと思う」人が増えている。25歳の若者も、ミレニアル世代と比べると許容度が高い。

 また、従来品の内容量も、消費者がステルス値上げを許容できるかどうかの一つのカギとなる。容量が減っても商品として成り立つかどうかということだ。例えば前述のボリュームダウンしたコンビニエンスストアの弁当の場合。いつも通りに購入し昼休みに食べるとすると、昨日までのようには胃袋を満たせない。その実感を伴う不満は、即座に購買意欲に反映されるだろう。

 では、袋菓子など元々の量が多いものだとどうだろうか。もちろん、中には「量は多いに越したことはない」と考える人も一定数いるだろう。ただ、従来の量が適正であったかは判断しづらく、むしろ「これまで量が多くて余っていたから、若干であれば量が少なくなったとしても問題ない」というケースもあるかもしれない。

 ここまで、商品ターゲットの年齢や内容量によってステルス値上げが問題になりにくいケースについて述べてきた。しかし誤解しないでほしいのは、いずれにせよステルス値上げにはリスクがあり、消費者に対して誠実な対応とは言い難いということだ。

 目立った炎上につながらずとも、敏感な消費者相手に真の意味で「ステルス」にやり過ごせるケースはまれである。そして、ステルス値上げに気が付いた消費者の満足度は、程度の差はあれど確実に低下していく。