この半年で5兆円もの金融資産を失った日銀
ただ、問題の本質はもっと他のところにあります。そもそもの話をしてしまえば、日銀は今、日本の物価上昇とか景気のこととかをまったく考えていません。というよりも、「考える余裕がない」というのが現実です。
なぜかといえば、日銀自体が「存亡の機」に陥っているからです。
ご存じの通り、日銀は10年近くにわたって膨大な日本国債を買い入れることで、市場におカネをばらまき続けてきました。いわゆる「異次元の金融緩和」です。その結果、現在の日銀のバランスシートには大量の日本国債が計上されています。
金利の上昇はすなわち、国債価格の下落を意味します。日銀が指し値オペで必死に支えていたにもかかわらず、この半年で国債価格(10年債)の金利はじわじわと上昇し、国債価格は下落していきました。
その結果、日銀のバランスシートには含み損が発生してしまったのです。その含み損が発生するラインが0.25%だったのです。0.5%に許容幅を拡大したということは、この防衛戦を放棄したということです。
この防衛ラインに固着すると、外国人の執拗(しつよう)な国債売りが続き、それを全て買い取っていると日銀のバランスシートは途方もなく膨張してしまいます。「これは、いかんともしがたい」と防衛ラインを下げたのです。