写真:株価,為替写真はイメージです Photo:PIXTA

2022年10月、ついに1ドル150円台にまで円安が進んだドル円相場。日銀の「利上げ」もあり円高に振れたが、経済評論家の藤巻健史氏は「これらはいわば追い詰められた政府と日銀の悪あがきであり、効果は極めて限定的」という。そして、その象徴ともいうべきが「為替介入」だと指摘する。

※本稿は、藤巻健史『超インフレ時代の「お金の守り方」 円安ドル高はここまで進む』(PHPビジネス新書)から一部を抜粋・再編集したものです

「ドル売り・円買い介入」は難易度が高い

 進む円安に対して、「これ以上の円安を政府が許すわけがない。どこかで為替介入が行われるはずだ」と期待する人もいるでしょう。

 ちなみに誤解されがちですが、為替介入をするかどうかを決めるのは日銀ではなく、政府、つまり財務省です。日銀はその手足となって動くだけです。

 実際、これまでにも政府による為替介入は幾度となく行われてきました。しかし、この局面においては、為替介入の影響は限定的だと言わざるを得ません。

 そもそも為替介入には2種類あります。円高を防止するためにドルを買う「ドル買い・円売り介入」と、円安を防止するためにドルを売る「ドル売り・円買い介入」です。

 ドル買い・円売り介入とはつまり、自国通貨である円を原資にドルを購入することです。円は自国通貨ですから、ほぼ無制限に調達することができます(より正確には、財務省がT‐Bill〈国庫短期証券〉を発行することで円を調達します)。

 一方、ドル売り・円買い介入とは、日本が保有している米国債やドル預金で運用している外貨準備を原資として行うものですから、当然、限度があります。2022年9月末現在の外貨準備高は1兆2380億5600万ドルと余裕があるように見えますが、限度があるのは事実ですし、介入に限度があるとなると、市場に足元を見られてしまい、その効果は限定的になります。

 つまり、円高防止のための「ドル買い・円売り介入」よりも、円安防止のための「ドル売り・円買い介入」のほうが、難易度が高いのです。

 そもそも、日本の外貨準備の大部分は米国債です。具体的には、1兆2380億5600万ドルの外貨準備のうち9852億7200万ドルを外貨建て証券で運用しているのですが、そのうちの大部分が米国債なのです。その米国債を売却してドルに変えれば米国債の値段は下がり(金利上昇)、日米金利差がさらに拡大して円安ドル高が進むという、皮肉な話になるのです。