株式投資をする人たちの間で大きな支持を集めている話題の1冊が『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。60問のクイズを答えていくだけで、「株式投資のコツ」や「株の売買タイミング」がつかめる手軽さが人気だ。「チャートを勉強したけど成果が出ない……」。その原因はどこにあるのか。チャートで稼ぐにはどうすれば良いのか。『株トレ』の著者であり、ファンドマネジャーとして2000億円超もの資金を運用してきた経歴を持つ楽天証券・窪田真之氏に話を聞いた。(取材・構成/伊達直太)

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チャートは未来を予測するものではなく、現在の動きを見るためのもの

 チャートを分析すれば未来の値動きを予測できる。これは株で負けている人に多い勘違いの1つです。

 チャートは占いでもまじないでもありません。チャートを見れば、投資家が「現在」何をしているかが見えます。でも、これから先の動きはわかりません。

 チャートだけで投資判断ができることは、めったにありません。ただし、たまに現在の投資家の動きから、株価はさらに上がるとか下がるとかいったことを高い確率で推測できる場合があります。

 そうした幸運な瞬間を逃さないために、チャートを見続ける価値があります。

「買い」のチャンスが訪れる瞬間

 例えば、長いこと値動きのなかった銘柄が急に大きく値上がりしたとします。チャートには、「大きな陽線(値上がりを示す線)」が現れ、「売買高(売買された数量)」が急増するといった変化が起きています。

 このチャートの変化から分かることは、今、たくさんの人がものすごい勢いで買い始めているということです。

 おそらく、株価上昇につながる材料(業績の変化に関連するニュースなど)があったのでしょう。その材料を踏まえて「俺も」「私も」と買う人が殺到し、人気化しているわけです。

 このようにチャートに変化が出てきた時は、買っている人が増えているから今後も株価が上がっていく可能性が高いと判断できます。つまり「買い」の選択をできるわけです。

 株価が動いていない場合も考え方は同じです。値動きが小さく売買高が少なければ、市場の注目度が低いということです。その銘柄が「買われている」「売られている」という情報がないわけですから、自分が売買する理由もないと判断できるでしょう。

未来予測をせずに、今起きた変化についていく

 ここで重要なのは、先入観を排除してチャートを読み、チャートの変化についていくトレードをするということです。

 株で負ける人の多くは「この株はこれから上がりそうだ」などと、自分なりの考えで未来を予測し、トレードしているのではないでしょうか。

 多くの個人投資家は、買った株が上昇した時には「そろそろ下がりそうだ」と考え、買った株が下がった時には「再び上がるだろう」と考えてトレードしてしまう傾向にあるのですが、これは思い込みと言っても良いでしょう。

 また相場の世界では、アナリストの中にも「いよいよバブル崩壊」「FRBはこう動くはず」などと予想する人がいます。その背景にはファンダメンタルズの根拠があるのでしょうが、彼らが考える通りに株価が動くかどうかはわかりません。

 パフォーマンスのいいファンドマネジャーやトレーダーは、未来予測を基に売買判断をしているわけではありません。急騰や急落といった変化を素直に捉えます。

 チャート分析を売買に生かすのであれば、未来予測を基に売買するクセを断たなければいけません。

 チャートを見ても未来は見えません。見えるのは「現在」の変化です。この変化を捉えて、株価と売買高が急激に上がり始めた時は「買い」、反対の時は「売り」の判断をします。

 上がって買った後に、悪材料が出るなどして急落した場合は、いったん売ればいいのです。

 こんなふうに、チャートの変化に素直に反応してトレードできるようになれば、株で勝てる確率も上がっていくでしょう。