「これの一体どこが成長戦略なんだ」。今年初め、あるリース会社の幹部は、経済産業省が検討を進めている製造業向けの支援策を見て、苦笑するしかなかった。
リース業界の現状を全く理解していないだけでなく、シャープなど特定の大手企業を念頭に置いた事実上の「救済策」と思われる杜撰な内容だったからだ。
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大手のリース各社が一様にあきれ返る救済策とは、一体どのようなものなのか。具体的な中身はこうだ。
まず国とリース会社が連携し、共同出資の会社を設立。会社を通じて既存の工場や生産設備を対象企業から買い取った上で、リースに回す。リース契約が終了した後は、買い取った工場や設備を同業者などに転売することで、リース料と合わせて利益を得るという仕組みだ。
このスキームの一番の問題点は、転売にある。経産省が買い取りの対象として想定する液晶パネルや半導体などの製造装置は、企業が個別に細かい仕様を施している。他の企業がすぐに流用できるものではなく、転売が難しい分野だ。
転売が見通せなければ、必然的にリース料を上げざるを得ない。その場合、対象企業はわざわざ費用対効果に見合わないような高いリース料を払うことになるため、このスキームを利用するメリットは見いだしにくい。
万一、転売できる相手がいるとすれば、韓国など海外のライバル企業だ。それでも、足元を見られ二束三文で買いたたかれるのが落ちだろう。国際競争力強化を掲げながら、敵に塩を送るようなことにもなり、それは経産省としても本意ではないはずだ。
5年で1兆円という買い取り規模を見ても、リース業界全体の規模が4兆円強ということを考えると「ばかばかしい」(大手リース会社)ものだ。