韓国サムスン電子の収益が急激に悪化している。2022年第1四半期に売上高は過去最高に達したものの、第4四半期の営業利益は前年同期比69%減に落ち込み、約10年ぶりの低水準。経営陣にとっても今回の決算は想定外だったようだ。いったい、サムスン電子に何が起きているのだろうか。同社の経営状況と韓国経済に与える影響を解説する。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
足元、韓国サムスン電子の業績が急激に悪化している。2022年10~12月期(第4四半期)の決算速報によると、営業利益は4.3兆ウォン(1円=10ウォン換算で4300億円)に減少した。
背景にはいくつかの要因がある。中でも、世界的なメモリー半導体の市況悪化は大きい。加えて、スマートフォンなどこれまでのサムスン電子の成長を支えたITデバイスなどの需要も減少した。今後の状況はさらに厳しさを増すだろう。
サムスン電子は、次世代ロジック半導体や次世代通信、車載用バッテリーなど先端分野への設備投資を積み増す方針を明確に示している。特に、同社は台湾積体電路製造(TSMC)を上回るスピードで、次々世代の回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の量産体制確立を目指している。
ただ、ファウンドリー専業ではないサムスン電子にとって、それは容易ではない。世界で景気後退への懸念が高まると、スマホなどの分野で中国企業との価格競争は激化するだろう。韓国経済にとってサムスン電子は中核的企業のひとつ。同社の業績低迷は、韓国経済の先行き不透明感を高めるだろう。