科学的に考える力を育むにはどうしたらいいのか。サイエンスライターの緑慎也さんの著書『13歳からのサイエンス』(ポプラ新書)では、科学コンテストで賞を受賞した8名の若者たちやノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏らに取材をし、そのヒントを探っている。今回は、そのなかから、曾祖父のために新聞の字を拡大できるアプリを開発した高校生のエピソードを紹介する。
エンジニアの高校生、Netflixの見方とは
高校1年生の大塚嶺(れい)さんは、動画配信サービスNetflixのヘビーユーザーで、常時5000本は配信されている作品の5割弱は見ているという。映画、ドラマ、アニメなど、ジャンルは問わず、気になったものは片っ端からチェックする。シリーズものはまず1話だけ倍速で視聴し、続きを見るかどうかを決める。
これは、中学校に入って以来の趣味だという。
凄まじい視聴量だが、今どきNetflixにはまる高校生は珍しい存在ではないだろう。しかし、大塚さんの映像コンテンツの見方は少し変わっている。
「人に自分のアイデアを説明する材料として、映画のシーンが便利なんです。特に開発プロジェクトのチーム内での会話などで、一部の機能を説明するのに、現実にはまだ存在しないテクノロジーが作品内では具体化されているので、『あの映画のあのシーンに出てくるあのテクノロジー』と言えば、イメージを共有しやすい。開発のヒントにもなるので、映画をたくさん見ることは役に立ちます」
なぜ大塚さんは映像コンテンツを単に楽しむだけでなく、作品中に出てくるテクノロジーや、それに近いテクノロジーを、現実社会でどう実現できるのかという視点で見ているのか。
それは、先のコメントからわかるように、高校生でありながら、エンジニアとしても活動しているからに他ならない。