2023年の日本株「上昇継続」が期待できる理由、世界景気の減速をカバーする中長期循環Photo:PIXTA

足元の日本景気
製造業で弱めの動き

 経済正常化への動きや半導体などの供給制約の緩和で、日本経済は22年夏場に急回復をみせたが、その後、上向きの動きが止まってきている。まん延防止等重点措置の解除後に大幅に持ち直したサービス消費は、感染拡大の第7波、第8波を迎えても、政府が厳しい制限措置に慎重な姿勢をとり続けていることから回復基調を維持しているが、製造業を中心とした生産活動や輸出に弱めの動きがみられている。

 鉱工業生産は、22年4、5月の大幅な落ち込みののち、夏場に大幅な増加となったが、9月以降は減産が続いている。四半期ベースでは、7~9月期に前期比5.8%増となったが、10~11月平均は、7~9月期を3.3%下回っている。鉱工業の輸出向け出荷は、6、7月の急増後、一進一退で7月がピークとなった可能性が出ており、10~11月平均が7~9月期平均を下回っている。

 鉱工業生産や輸出数量、小売販売額など、景気と連動する代表的な10指標を合成した内閣府の景気動向指数のCI一致指数も、22年9月以降、低下が続いている。指数をもとにした内閣府の景気の基調判断は、景気拡張(回復)の可能性が高いことを示す「改善」だが、判断基準の1つである3カ月後方移動平均は、10月、11月と2カ月連続で低下している。

 景気判断を「改善」から「足踏み」に変更するには、「3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差以上」となることが基準とされている。ここ2カ月は、3カ月移動平均(前月差)がマイナスとなっているが、マイナス幅が基準に届いていない。ただし、22年12月も低下すれば、景気判断が「足踏み」に変更される。
 
 秋以降の生産活動や輸出も、大幅に落ち込んだ22年5月の水準を大幅に上回っており、底割れには距離があるものの、上向きの動きが止まっている。一つの要因には、半導体などの供給制約の影響が、依然として残っていることが影響している。国内の自動車生産は、6月以降の急回復後、秋に下振れしている。

自動車持ち直しの一方で
輸出の弱さが続く

 ただ、部品の供給制約も緩和しており、大手自動車メーカー(トヨタ自動車)の生産実績、計画(報道ベース)をもとに、季節調整値を推計すると、22年10月の大幅減産の後、11月は10月の減産を取り戻す増産となっている。また、12月以降、23年3月までの計画では、増産基調が見込まれており、23年3月の生産水準は、22年11月に対して2割増産の計画になっている。

 自動車生産の下振れによる自動車輸出の弱含みは解消されることが期待されるが、輸出については、その他の財でも弱めの動きが確認されている。輸出額の半分近くを占める資本財の輸出も22年秋に弱含んでいる。資本財の輸出向け出荷は7月をピークに、その後は水準を下げている。

 米国、欧州などをはじめとする世界的な利上げ、金融引き締めが続く中で、世界経済が基調としては減速しており、こうした動きが日本の輸出、生産活動に影響している。各国・地域をみると、製造業部門の景況感の弱さが目立っており、世界的に生産活動が減速し、さらに設備投資のサイクルの下降が続き、日本の資本財輸出の弱含みにつながっていると考えられる。

 さらに、資本財輸出の先行指標となる機械受注の外需の減少が続いている。機械受注・外需は22年4月をピークに減少基調にあり、四半期ベースでみると、7~9月期に前期比16.5%減、10~11月平均はさらに4%減少しており、資本財輸出が先行きで弱含む可能性を示している。