―――毎月発行しているWSJ日本版「紙面」に掲載された編集長コラム。2022年10月号のPDFはこちら。***プロ野球ファンとして、今シーズンはやはりヤクルトの村上宗隆選手に心が踊った。歴代単独2位の56本塁打を記録。さらにプロ野球で18年ぶりとなる三冠王を22歳の最年少で達成した。しかし、自戒の念も込めてその報道ぶりに違和感を覚えた。 「日本選手(または日本人選手)最多となる56号本塁打 ――」。村上選手の偉業について多く使われた表現だ。なぜ国を持ち出すのか?同じく米大リーグでア・リーグ新記録の62本塁打を放ったヤンキースのアーロン・ジャッジ選手について、米メディアに「米国の」という表現は見当たらなかった。中南米を筆頭にアジアなど米国以外の選手が活躍する大リーグでは、記録に国籍を結びつける発想はない。