海外からも大規模にすしネタを仕入れる大手回転ずしは、為替変動の影響を受けやすい状況にあります。この状況下で迎えた円安の影響は大きく、さらにはエネルギー高や各種資材高騰なども重なりました。
これらが利幅を押し下げる要因ともなっています。例えば、2022年10月に発表されたくら寿司の1年間の決算では、売り上げが前年比23%増の1830億円で過去最高となった一方、営業損益は11億円の赤字であったことが伝えられています。
「一皿100円均一」は終了、
過度な“安かろう”から脱却して向かう先
このような状況の中、大手回転ずしの「一皿100円すし」に代表される低価格競争には、無理が生じてきているといえます。
現に、業界最大手2社のスシローとくら寿司は10月1日から価格改定を実施。その結果、2社のシンボルでもあった税抜き100円のすしが消える結果となりました。このほか、かっぱ寿司、はま寿司などの各社でも価格改定の動きは広がっています。この価格改定は、単純な全品値上げではないものの、実質的な値上がりといわざるを得ない状況となっています。
さらには、業務改善に向けた動きも進められています。例えば、スシローでは、先述のおとり広告の件を受け、現在では品切れ情報がオンラインで確認できるようになりました。メニューについても、天然資源に依存しない完全養殖の魚を用いるなど、運営が持続可能な体制づくりが進められています。
このように、単なる「安かろう」からの脱却を図り、「すしを通じて気軽に楽しく食事をする場を提供する」という方向にシフトしつつあるといえるでしょう。
しかし、低価格だった大手回転ずしの実質的な値上げは、すしを提供する他の業態との差を縮める結果ともなっています。これまでは、大体客単価1000円程度と言われていた大手回転ずし。この客単価が上がるとすれば、そもそもすしでなく別のものを食べるか、すしを提供する他の業態を選ぶ客も増えてくる可能性があります。