ドル円相場は昨秋の急上昇(円安)が一巡後は揺り戻しが続き、12月の日本銀行の政策修正がさらなる下落を促した。バークレイズ証券の門田真一郎チーフ為替ストラテジストは、この先もドル円相場は下落(円高)の方向性をたどる可能性が高いと分析。その理由を国内外の3つのポイントから解説した。
ドル円は125円程度まで下落を想定
より大幅な円高のシナリオも
外国為替市場で、ドル円相場は2022年10月に1ドル152円目前まで迫った後、それまでの上昇を急激に反転させてきた。
11月序盤以降のFRB(米連邦準備制度理事会)による「ピボット(政策転換)」を受け、ドルは幅広い通貨に対して大きく売られている。加えて、日本の11月の経常収支が市場予想を上回る改善を示す一方、訪日観光客は堅調に回復しており、こうした展開も円を下支えした。
さらに、日本銀行による22年12月の予想外の政策調整と、それに伴う追加政策修正への期待の高まりが、ドル安・円高に拍車をかけた。
日銀は22年12月の政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みにおける10年物国債利回りの許容変動幅を±25bp(ベーシスポイント)から±50bpへと拡大。国内インフレ率が高進する中でのこの決定は、追加政策修正の臆測を呼び、日銀はYCCの変動幅を維持するために国債買入の拡大を余儀なくされた。
これを受けて市場では、長期金利許容変動幅の再拡大、より短期の年限(例えば5年債)へのターゲット変更、あるいはYCCの完全な廃止など、政策修正についてさまざまな思惑が生じていた。1月の日銀会合を前に、ドル円相場は昨年6月以来の低水準となる1ドル127円台まで下落していた。
このような市場の期待の高まりに反し、日銀は1月会合でYCCの許容変動幅を±50bpに据え置く一方、資金供給オペを調整することでイールドカーブ形成を支援する決定を下した。日銀の政策修正の見送りを受けてドル円は急騰。発表の直後には2%上昇して1ドル131.5円に達し、前週の下落の大部分を巻き戻した。しかし、これはつかの間のラリーとなり、翌日の東京時間朝方には会合前の水準に戻った。
バークレイズでは今後、ドル円相場が1ドル125円まで下落するとみているが、当社予測に対するリスクはより大幅な円高の方向に傾いている。その理由を大きく3つのポイントから解説していく。