2023年は「ドル安円高」の年、日本に資金が流入するこれだけの理由Photo:PIXTA

2022年は歴史的なドル高円安の年となった。しかし、23年は風向きが変わり、ドル安円高が進行し、他市場に比べて出遅れていた日本株に資金が流入する年となりそうだ。その要因を探る。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

米利上げにゴールが見えないなか
ドルはピークアウトしつつある

 11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.75%の利上げが決定され、FOMC後の会見では、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が「最終的な金利水準は従来想定より高くなった」、「利上げ停止を考えるのはあまりにも時期尚早」などと発言した。

 ゴールの見えない利上げに対し、米国債市場では不安定な値動きが続いているが、他方、為替市場ではドルが主要通貨に対してピークアウトしつつある。

 CFTC(米商品先物取引委員会)が11月4日に発表したシカゴIMM非商業部門主要6通貨(円、ユーロ、英ポンド、豪ドル、加ドル、スイスフラン)先物のポジション(11月1日集計分)は30.8億ドル(集計日の各通貨の対ドルレートをもとに、ドル金額ベースのポジションをSMBC日興証券が算出)のネットショート(=ドルロング)となった。

 前週の88.1億ドルからネットショートが大幅に縮小したが、ネットショートの最大水準(2022年)が198.2億ドルであった(5月10日集計分)ことを考えれば、ドルロングは相当に解消された格好といえる。

 11月10日の10月米CPI(消費者物価指数)の公表後には、過度な利上げへの期待が大幅に収縮する形でドルインデックスが2%近く下落し、改めて市場におけるドルピークアウト期待の高さが浮き彫りとなっている。

 ドル円も一時140円台まで下落したが、FRBによる利上げ局面が終了し、利下げが意識されるようになれば、ドルは主要通貨に対してさらに下落する公算が高そうだ。

 ただ、円については、我が国の金融緩和政策の継続をよりどころに「独自の円売り圧力が強まる」との声も一部であり、つまり、23年にドル安となっても、円安が持続するとの見通しも少なくない。

 一時150円を上回ったドル円が、米国の利上げ期待剥落だけで140円まで下がった点に鑑みれば、日銀による「無駄な利上げ」が行われなかったことは正解だったように思われるのだが、23年、日銀の金融緩和維持は「終わらない円安」のよりどころとなり、結果として日本経済を苦しめることになるだろうか。

 23年も円安が継続することはないと予想している。次ページからその要因を解き明かしていく。