今、「学校に行かない子どもたち」が、とても増えています。小・中学校の長期欠席者は41万人(うち不登校が24万5000人・令和3年度)にのぼり、過去最高を更新しています。 本連載では、20年にわたり、学校の外から教育支援を続け、コロナ禍以降はメタバースを活用した不登校支援も注目される認定NPO法人「カタリバ」の代表理事、今村久美氏の初著書「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から、不登校を理解し、子どもたちに伴走するためのヒントを、ピックアップしてご紹介していきます。
「不登校」の原因は簡単に分かるものではない
これだけ「不登校」も「不登校傾向」も増え続けているのだから、子どもが学校に行けなくなる明確な理由があるに違いない、と思われるかもしれません。
文科省は、不登校の要因としては学校起因(21・2%)、家庭起因(12・3%)、本人起因(61・4%)というデータを出していますが、実際はそんなに簡単に割り切れるものではありません。
子どもが答えた理由が真の原因とは限らない
不登校は、子どもの日常に“何か”の出来事が長い期間、解決されずに絡み合った結果として表れる現象です。子どもに、それを聞き出せば、いじめ、先生とのトラブル、勉強への苦手意識など、何らかの理由を答えるかもしれません。しかし実際は、子ども自身の言葉では表現できない“何か”、たとえば発達の特性や、健康問題、家庭での出来事などが複雑に関係しています。
たとえば学校に行きしぶる子どもが「友達とうまくいかないから」と答えた場合、前出の分類なら「学校起因」に当てはまりますが、その根っこには、幼い頃に親御さんたちに甘えられず愛着障害が生じて、他人と人間関係をうまく結べなくなった、という意外な原因が潜んでいるかもしれません。
では、なぜ子どもを甘えさせられなかったのかというと、夫婦の不和があって、親御さんが余裕を失っていたのかもしれません(前出でいう「家庭起因」)。
しかし、実はその不和は、子どもの育てにくさ(前出でいう「本人起因」)を理由に夫婦ゲンカが重なった末のことなのかもしれません……。
また、前出の調査では、不登校の最多の要因となっている「本人の無気力、不安」なども、原因ではなく、親や教師との関係がうまくいかない結果ともとらえられます。
このように、原因はひとつではなく複雑に絡み合っていることがほとんどで、ひとつの原因を特定することはあまり意味がないのです。
*本記事は、「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から抜粋・編集したものです。