手を使わずに脱ぎ履き可能
裏にある二つのメカニズム

 このシューズの特徴を、ひとことで言うならば、手を使わず簡単に脱ぎ履きできる点だ。実際、NIKEは「ハンズフリーで使えるシューズの創作」という目標を掲げて、この製品を開発したのだという。

 一見すると普通のスニーカーと同じだが、「ゴー フライイーズ」は靴の中足部が「への字」に折れ曲がる構造になっている。靴を脱ぐときは、もう片方の足でかかとを抑えながら足を上げると、本体がぱっくりと折れ曲がり、足をスルッと出すことができる。
 
 靴は「への字」の状態で安定しているので、再度履くときには、折れ曲がったままのシューズの先に足を入れてそのまま体重をかければよい。すると、シューズの底は平らになり、普通の靴と変わらない形になる。
 
 通常の脱ぎ履きにありがちな動作、たとえばかかとをつまんだり、「シュータン」といわれる足の甲を覆う部分を手で引っ張ったりという動作は必要ない。
 
 これらを可能にしたのが、「ゴー フライイーズ」に内蔵されている二つのメカニズムだ。
 
 一つは、シューズの折れ曲がる部分につけられた「双安定性ヒンジ(ちょうつがい)」である。靴底の中ほどに見える赤色の部分がそれだ。
 
 この靴で重要なのは、「への字」に折れ曲がったときも安定して自立していること。もし靴を脱いだ後、折れ曲がった状態で自立せず、フニャッと倒れてしまえば、再度履くときに手を使って靴を立たせないといけない。
 
 そこで重要になるのが双安定性ヒンジだ。これにより折れ曲がった状態のシューズを安定させているという。なお、この技術は特許出願中だ。
 
 二つ目のメカニズムは、シューズの側面下部(ミッドソール)をぐるっと一周覆うテンショナー(張力調整装置)だ。
 
 このテンショナーは、いわば太いゴムバンドでシューズを外から締め付けるような役割をしている。そのため、靴を脱いだときは収縮して折れ曲がった状態で安定し、一方で靴を履いたときは適切な圧力で足を固定するようになっている。