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ブランドを活性化させるためには、大なり小なりイノベーションを起こしていく必要があります。ここで、「新商品なんてすぐには思いつかない」「凡人にはそう簡単に技術革新は起こせない」などと嘆いてはいけません。早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、イノベーションを生み出す方法について、「すでに存在する知と知を組み合わせること」と定義しています。
※本稿は、乙幡満男『儲かるブランドは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

ブランドの「らしさ」を守りながら進化する

 ブランドを活性化し続けるためには、メディアやSNSで話題になることも大事ですが、それ以前に商品やサービス自体を継続的にイノベーションしていくことが必要です。一時的にどんなに注目されたとしても、変化のないブランドは徐々に飽きられてしまうでしょう。

 新しい商品やサービスを開発する際、大切なのは、開発したものが引き続きブランドの「目指す姿」を具現化したものになっているかどうかです。イノベーションを経てもなお、軸となる「らしさ」を提供し続けなければ、ブランドの根底を揺るがすことになりかねません。

 それに加えて、本章の大事なポイントである「顧客にとってどんな価値があるのか」という視点も重要です。

 ドリルを買おうとしている人々は、「穴がほしいのだ」という言葉を思い出してください。商品開発をしていると、「どんなドリルを作ろうか?」「女性向けにピンク色にしてはどうだろう?」など、ついドリル自体の具体的な仕様に意識が向きがちですが、顧客がほしいのは「穴」であることを忘れてはいけません。

 マーケティングでは、「WHO」「WHAT」「HOW」を用いて、「誰に対して、何を、どのように売るか」を考えるのが基本ですが、ここで「WHAT」を具体的な商品(この場合はドリル)と解釈するのは間違いです。

「WHAT」は商品ではなく、「顧客にとっての価値」を指しますので、ここでは「1/4インチの穴」が該当するでしょう。したがって、商品コンセプトは「1/4インチの穴が開けられるドリル」とするのが正解です。

 このように、新たな商材を開発する際には、自社にしかない強みである「らしさ」を生かすことに加え、「顧客のどのような課題を解決できるのか」=「顧客から見た価値」は何かを考え、コンセプトとする必要があります。

 そして、その商品やサービスが「何をしてくれるのか」をわかりやすい言葉で表現し、顧客に対して打ち出すことが成功の秘訣となるでしょう。イノベーションを起こすときに、忘れてはいけないポイントです。