さらに言うと、子どもは親を選べません。金持ちの家の子だろうが貧乏な家の子だろうが、子どもは子どもです。
親の収入のせいで支援の対象外になる子もいれば、「親が申請しなかった」「連絡がつかなかった」せいで、逆に貧困家庭の子どもに支援が届かないケースだってあります。どんな子どもにも支援の手が届くようにするためにも、はじめから「所得制限なし」「対象はすべての子ども」にしておくことは必須です。
目先の話ではなく、
未来のために
「子どもの未来」は「社会の未来」そのものです。
人は老いていき、いつか子どもたちがまちの未来をつくります。子どもを応援することは、私たち自身の未来を応援することでもあるのです。
自分たちのまちが「暮らし続けられるまち」であるために、未来を担う子どもたちを今の社会のみんなで応援する。みんなの税金で、まちのみんなで、すべての子どもを応援する。当然のことです。「子育て世代だけ優遇しやがって」みたいな目先の話ではありません。子ども施策は、みんなに必要な施策、ある意味「未来施策」なのです。
明石市はあれもこれも、幅広く子ども施策を展開していますが、「救貧施策」と「未来施策」は分けて考えています。
救貧施策は、どこのまちでも実施しています。
支援が必要な一定の対象に、個別にスピード対応する。身近な基礎自治体が個々の事情に応じて寄り添う。現金給付も有効な手段です。
一方の未来施策は、社会全体で次世代を育み、未来につなげるベーシックな子育てサービスです。
明石市は「5つの無料化」を、まさに「未来施策」として実施してきました。だから現金を配るのでなく、サービスへの追加費用負担をなくして、所得制限も設けず「すべての子ども」を対象としています。現金バラマキ施策とは、そもそも根本の理念が異なるのです
スタートは「経済」ではなく「人」
「あかん、これで明石は終わった」。11年前の市長選にさかのぼります。開票会場で私の勝ちが確定した瞬間、相手陣営の立ち合い責任者がこぼした言葉です。
就任直後には、市の財政担当に告げられました。
「明石市は赤字財政で、どんどん基金が減っています。現時点で70億円残っていますが、40億円以下には減らさないでください」。
調べてみると、阪神・淡路大震災の1995年には162億円。わずか15年で、半分以下に減っていたのです。
「何言うてんねん。減らせへん、増やすから」。
そう言うと、「はあ?」とあきれた反応をされました。
市民だって「ふざけた市長や」「高齢者いじめて子どもばっかり」と、言いたい放題でした。誰もが、私が市長になると「景気が悪くなる」と思い込んでいたのでしょう。
子どもが大人になるには、最低でも18年かかります。「子どもへの投資は、株や為替みたいにすぐには回収できない」と言われてきました。
それでも私を選んだ市民と、ふるさとである明石の未来のために。まず「子ども」から施策を積み重ねていくと、その効果は想像以上に早く表れました。
毎年1000人減ると予測されていた市の人口が、増加に転じるまで、わずか2年。
「やっぱり」との思いでした。
これまでいかに日本が子どもを支援してこなかったか、明らかだったからです。
人が増えれば、地域も賑わいます。今では飲食店の店主も「いや市長、子どもはええわ。大事や」と寄ってきます。「あれほど嫌がっていた娘が、孫を連れて明石に帰ってくる」と喜んでいます。「10年前何言うてました?」と突っ込みたくもなりますが、まぁいいでしょう。
マンションの建設ラッシュが始まると、公共事業費を大幅にカットしたことから根強く市政に反対し続けていた建設業界も、本来の民間需要で潤い出しました。
就任時に70億円だった市の基金も、2021年には121億円に。50億円以上増やしました。最近では、当初に思い描いた以上のことも起き始めています。
「住みたい自治体ランキング関西版」では、2018年の24位から毎年順位を伸ばし、2022年には6位にランクイン。「全国戻りたい街ランキング2021」では、福岡市を抑えての第1位。「本当に住みやすい街大賞2022 in関西」では、なんと西明石が第1位に選ばれました。さらに、2022年の関西の住民実感調査では、「子育てに関するサービスが充実している自治体ランキング」第1位となり、合わせて「住み続けたい駅」第1位に東部の人丸前駅が選ばれました。
支援は「企業」からではなく
「子ども」から始める
昔は合コンで出身地を聞かれると、明石市民でも「神戸の近くです」なんて誤魔化していたのに、明石もずいぶんイメージが上がったものです。
神戸で飲んでいると、マスターが「そろそろ独立しようと思ってんねん。店出すとしたら、今はやっぱり西宮北口か明石かな」と言います。ずいぶん驚きました。駅前には高級スーパーが次々に出店し、有名ブランドのお店もできました。つぶれる気配などまったくありません。ミシュランガイドで星つきの天ぷら屋さんの移転話や、新ブランドの「兵庫県初出店・明石にオープン!」といった話も増えてきました。
根気強く、あたりまえのことを言い続けてきました。
「税金で商店街に立派なアーケードをつけても儲かりません。それではお金は回りません」「市民が使えるお金を増やせば、お店も流行ります」。
ずっと伝え続けてきました。天動説の時代に地動説を唱えていたコペルニクスの気持ちです。
いずみ・ふさほ/1963年明石市二見町生まれ。1987年東京大学教育学部卒業後、NHKディレクターに。1997年弁護士、2003年衆議院議員を経て2011年より現職。「5つの無料化」に代表される子ども施策のほか、高齢、障害者福祉などに力を入れて取り組み、市の人口、出生数、税収、基金、地域経済などの好循環を実現。人口は10年連続増を達成。柔道3段、手話検定2級、明石タコ検定初代達人。 写真:片岡杏子
それでも、対立陣営も議会も職員も市民も、みんな口々に「子どもよりも産業振興を」「まずは企業を支援して、景気を上げろ」と言うのです。「景気が良くなったら、給料も上がり、子どもも増える」と。
かたくなにその順序に固執してきた日本の現状は、経済は上向かず、子どもの数は減りつづけています。
まずは企業、で終わり。いつまで経ってもお金は一般市民にまで回ってきません。本来、最初に大切なのは「人」のはずです。それなのに、いまだに放置されたまま。政治が最初に見るところも、スタートも違っていたということです。
支援は「企業」からではなく「子ども」から始める。「子ども施策」は「経済施策」です。子どもを本気で応援すれば、市民の側からお金は回り始めます。人も集まる。まちが賑わう。子どもにやさしいまちは、みんなにやさしいまちになる。子どもたちはまちの将来を担うので、結果としてみんなを支える。みんなが暮らしやすいまちとなるのです。
次回は『明石市の評判を大改善した泉市長の訴え「あなたの選択が政治を変える」』について紹介します。








