岸田文雄首相が防衛費増額の次に打ち出した「異次元の少子化対策」で財源問題がくすぶり、またもや増税論がささやかれている。しかし今の日本は、増税どころか国債発行に逃げることすら避けるべき危機的な国民負担の水準にある。(イトモス研究所所長 小倉健一)
「異次元の少子化対策」
本当に効果は出るのか?
岸田文雄首相が念頭会見で打ち出した「異次元の少子化対策」の表明を巡って、財源をどう確保するかが焦点になりつつある。岸田首相は、1月4日の年頭会見において、「静かな有事」と称される少子化の進行を止めるべく、決意を表明。経済財政運営の基本指針「骨太の方針」を決定する6月までに、「こども予算倍増に向けた大枠を提示」するのだという。
日本はこれまで、「エンゼルプラン」「緊急保育対策等5か年事業」(1994年)など、1990年代からありとあらゆる少子化対策に取り組んできたが、効果を上げていない。海外の事例を見ても、子育て支援大国とされたフィンランドの合計特殊出生率は2019年に過去最低の1.35まで下がり、一時は日本以下になった。
少子化対策を巡っては福祉関係の識者や業界が一様に、「政府の本気(予算/財政支出)が足りないからだ」と主張している。しかし、例えば、赤川学・東京大学大学院教授は「日経ビジネス」(電子版、2022年10月23日)において次のように語っている。