1位、2位は今年も「東大」
コンサルとITが人気の理由

 東京大学の就職先のトップに見られる独特な傾向とは、1位と2位が一般企業ではなく、いずれも東大関連であることだ。

 21年に続き、22年も第1位が東京大学、第2位が東京大学医学部附属病院となった。就職者数は前者がダントツの155人、後者が56人だった(21年はそれぞれ185人、58人)。とりわけ東京大学医学部附属病院は、20年の20位から21年には2位へと順位を大きく伸ばしている。東京大学の内訳は分からないが、研究員などが含まれると見られる。

 企業に就職せず大学に残る優秀な人材が多いということだが、理由としては他大学と比べて研究・労働環境がかなり恵まれていることが考えられる。コロナ禍の出口がなかなか見えず、企業社会に「不確実性」が漂う中で、就職活動に慎重になる学生が増えた可能性もある。

 他に目を引くのが、冒頭で述べたコンサルティング業界人気の底堅さだ。アクセンチュア(3位)、マッキンゼー・アンド・カンパニー(6位)、野村総合研究所(8位)、PwCコンサルティング(18位)と、トップ20のうち4社をコンサルが占めている。21年はデロイト トーマツ コンサルティングも含むコンサル5社が、トップ10に名を連ねていた。

 コンサル人気の背景として、「不確実性が増す世の中で、いざというときのために個人としての能力を高められる環境で働きたい」という学生が増えていることが指摘されている。一方コンサル側は、経営課題解決のサポートを求める企業が急増する中で、ここ数年、ビジネス拡大のために優秀な新卒・キャリア人材の採用を顕著に増やしている。東大生とコンサル業界のニーズがマッチしていることが、ランキング結果に反映されているのだろう。

 そのほか、ソニーグループ(4位)、日立製作所(7位)、富士通(10位)、三井住友銀行(13位)、野村證券(同13位)、三菱商事(18位)などが、順位の変動を伴いつつも、21年と変わらずランクインした。

 IT系では楽天グループ(5位)への就職人数の多さが44人と際立っているが、同社は東大のみならず、有名大学から多くの学生が就職を目指す人気企業である。今の若者は就活時の企業選びで「成長環境」「働きがい」を重視する傾向が強い。楽天をはじめ大手IT企業は、若手にも重要な仕事の経験を積ませてくれる社内風土があるというイメージが強いのだろう。

 ちなみにランキング上位には、前述のコンサル各社や15位の中外製薬など、働きやすい環境整備で注目されている企業も少なくない。コロナ禍の影響もあり、企業が優秀な学生を採用するためには「働き方改革」が欠かせない施策となりそうだ。

 かつて東大生の就職先と言われて思い浮かぶことが多かった官公庁については、経済産業省が15位にランクインしたのみ。学生の価値観が多様化している現在、「東大卒=官僚」というイメージは過去のものになりつつあるのかもしれない。

 東大の学生たちの就職動向は、業界・企業選びに臨む就活生やその親にとって参考になりそうだ。

*この記事は、株式会社大学通信の提供データを基に作成しています。

【ランキング表の見方】
2022年春の大学別の主な就職先。就職先(企業・団体)の名称は、原則としてアンケート調査時点の各大学の回答による。大学通信の調査方法によって表記しているため、正式名称と異なる場合がある。大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。東京大学は「東京大学新聞」より集計、大学院修了者を含む。
(調査/大学通信)