椅子に座って面接を受ける就職活動中の学生たち写真はイメージです Photo:PIXTA

就職率100%──それは本当に「誰もが希望の進路に進めた」という意味なのだろうか。受験生や保護者にとっては安心材料にも見えるこの数字だが、その裏には、就職希望者の定義や進路の取り扱い方によって大きく変わる“見え方”がある。数字が重視されるほど、本来の学生支援よりも「その数字をどう保つか」が意識されやすくなる側面もある。就職率や合格率という指標の仕組みと、その影響を考える。※本稿は、早稲田大学文学部学術院教授の小塩真司『「数値化」中毒 なぜ手段が目的に変わるのか』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

就職率100%の意味は
「卒業生全員が就職」ではない

 大学教員になってから間もない頃だったでしょうか、とある大学の前を通りかかったときに、「祝・就職率100%」という大きな垂れ幕が掲げられているのを目にしました。もうずいぶん昔のことですが、その光景は今でも印象に残っています。

 大学で働いていると当然のことのように感じますが、「就職率100%」というのは、卒業した学生全員が就職したという意味ではありません。就職率とは、「就職希望者」のうち「実際に就職した者」の割合を指します。大学院へ進学する学生や、留学する学生、専門学校への進学を希望する学生、あるいは家事手伝いやフリーターとして働くことを選ぶ学生など、「定職を希望しない」学生は計算の対象から外されるのです。

 もちろんこの大学では、きっと教職員が一丸となって懸命に進路指導を行い、企業や自治体など就職先とも連携して良い関係を構築したり、公務員を目指す学生には適切な対策を行ったり、きめ細かな対応をしたことで、この数字を達成したのだろうと想像されます。大学教員も職員も真剣に学生に向き合ったのだろうと想像し、その努力には頭が下がりますし、敬意を抱きます。