【最新の認知症治療を実践する脳のカリスマが30年超の長寿研究から導いた幸せな生き方】かつて100歳ブームを巻き起こした『100歳までボケない101の方法 脳とこころのアンチエイジング』の著者で医学博士・白澤卓二が、人生100年時代が現実になった今をよく生きる方法をまとめた『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』が完成。現在の脳のパフォーマンスを上げて、将来寝たきりや認知症にならずに長寿を目指し、人間の限界寿命とされる120歳まで生きる方法を提示します。

【世界的医学雑誌が明言】認知症の40%は予防や進行を遅らせることができるPhoto: Adobe Stock

「認知症になる」という壁をどう乗り越えるか

 長く健康に生きる「長寿脳」を手に入れるためには、「認知症になる」という壁を乗り越えなくてはなりません。

 認知症とひとくくりにいってもいくつかに分類されます。なかでも7割近くを占めるアルツハイマー型認知症は70~80代で発症することが多いですが、ある日突然なるわけではありません。実際には、40代くらいから無意識のうちにじわじわと進行することがわかっています。

脳にできる「老人斑」というシミ

 アルツハイマー病の要因は、脳内で作られるたんぱく質の一種・アミロイドβが増えすぎることです。アミロイドβは誰にでも存在しますが、増えすぎて溜まってしまうと毒素を出し、脳に「老人斑」といわれるシミができてしまいます。

 アミロイドβを過剰に増やさないためにはどうするか。それには「脳が必要とする栄養をとる」「脳にゴミを溜めない」「脳のゴミを排出する」の3つが非常に重要です。

 脳のゴミとは、具体的には、炎症を引き起こす病原体、口の中にいる細菌、鼻から入るカビ、ヘルペスなどのウイルス、虫の噛み傷から入る病原体などの物質、あるいは糖化たんぱく質、トランス脂肪酸などがあります。

認知症は脳の中だけの問題ではない

 認知症は脳の中だけの問題ではないことも明らかになっています。世界中でもっとも評価が高い、「ランセット」という医学雑誌があります。世界各国から投稿された論文を、そのジャンルの専門家がチェックして、妥当であれば掲載するというスタイルをとっている雑誌なので、掲載された論文は信憑性が高いとされています。

 その「ランセット」が出した「認知症の予防・介入・ケアに関する提言」によると、12項目の危険因子を取り除くことで、世界の認知症のおよそ40%は予防したり、進行を遅らせたりできるとしています。

 この提言では、人生を若年期、中年期、高齢期の3つの年代に分けて見ています。

 この論文の主旨を「認知症は60歳70歳を過ぎてから始まる問題ではなくて、長い人生において、さまざまなリスクにさらされている」と捉えれば、それらのリスクを可能な限り排除したほうがいいということです。今できることを把握して、リスクを回避することが肝心です。

【世界的医学雑誌が明言】認知症の40%は予防や進行を遅らせることができる

 次回からは、中年期の危険因子を中心に、回避する方法を解説していきます。

本原稿は、白澤卓二著『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』からの抜粋です。この本では、科学的に脳を若返らせ、寿命を延ばすことを目指す方法を紹介しています。(次回へ続く)

監修 お茶の水健康長寿クリニック院長・医学博士・医師 白澤卓二
1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大学院医学研究科博士課程修了。現在、お茶の水健康長寿クリニック院長。