ミーティング写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事で成果を上げるには周囲の協力が不可欠です。そこで重要なのが、いかに上手く人を動かすかということ。命令で動かすのは権力であり、スキルではありません。相手をその気にさせて自主的に動いてもらうにはどうすればよいのでしょうか?

※本稿は、佐藤 優『君たちの生存戦略 人間関係の極意と時代を読む力』(ジャパンタイムズ出版)の一部を抜粋・編集したものです。

人を動かす秘密(1)――「信念の体系」

 自分一人でできることは限られています。仕事で何かしら成果を上げるためには、周囲の協力が不可欠です。そこで重要になるのが、周囲の人をいかに上手に動かすか?動いてもらうようにするか?ということです。あなたが上司であれば直属の部下を命令によって動かすことができるでしょう。ただ、高いモチベーションを持って動いてくれるかどうかは別問題ですが。

 命令で人を動かすことは相応の立場でなければできません。そもそも、命令や強制によって人を動かすというのは権力であってスキルではありません。社会的に強い立場の人間が、その力を利用して相手が嫌がること、本意ではないことを強制する力が権力の本質です。どんな人間でも権力の座に就けば人を動かせます。それは力でありシステムであって、スキルとは違います。

 本当の意味で人を動かすということは、相手をその気にさせて自主的に動いてもらうことをいいます。その点で有効なスキルが、相手の「信念の体系」に働きかけるということです。どんな人でも自分の価値観や価値体系を持っています。それがどんなものであるかを見極めた上で、それを後押しする形で促すのです。

 例えば、会社の中で研究開発職に就いていた人が、その部署では強力なライバルがいて到底出世できないと悩んでいるとします。一方、彼は人と話すのが好きで研究室に閉じこもっているよりは、外に出たいと考えているとしましょう。

 そうであるならば、一度考え方を180度転換し、彼に営業職に移ることを勧めてみるのです。研究職で学んだ知識は、他の営業マンにはない強みです。その強みを生かせば、きっと新しい可能性が開けるはずです。相手の価値観や信念の体系に合わせて、それに訴えかけることで相手をその気にさせるのです。