グジェゴシュ・ルトコフスキ氏は、質感と光の巧みな表現で知られる絵画の巨匠、カラバッジオやレンブラント、フェルメールらを研究し、彼らのテクニックをまねる能力によってビデオゲーム業界で空想上の獣や風景を描く画家として引っ張りだこになった。しかし最近では、ポーランド・ピエンスクにある絵画のように美しい中世の広場に位置する木漏れ日の差すアトリエで絵を描いて過ごす時間よりも、オンライン会議システム「ズーム」で打ち合わせをしている時間の方が長い。話し合いの相手は弁護士やアーティストらで、議題は彼が突然それまで想像できなかったほど有名になった変わった理由についてだ。ルトコフスキ氏はその独特のスタイルや被写体の選択によって、ここ1年で爆発的な人気を得た人工知能(AI)システムを使用して絵を模倣されるアーティストの一人となった。そうしたAIシステムで最も有名なのが、米サンフランシスコに本拠を置くスタートアップ企業オープンAIが開発した「DALL・E2(ダリ・ツー)」と、スタビリティーAIが手掛ける「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」の二つだが、競合システムは急増している。