近年、「頭の回転の速さの象徴」としてお笑い芸人が多くの場面で活躍をしている。そんなあらゆるジャンルで活躍をし続けるお笑い芸人たちをこれまで30年間指導し、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも話題になった伝説のお笑い講師・本多正識氏による『1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術』が発刊された。ナインティナインや中川家、キングコング、かまいたちなど今をときめく芸人たちがその門を叩いてきた「NSC(吉本総合芸能学院)」で本多氏が教えてきた内容をビジネスパーソン向けにアレンジした本書は西野亮廣氏、濱家隆一氏(かまいたち)、山内健司氏(かまいたち)などからも絶賛されている。本記事では、『1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術』より、本文の一部を抜粋・再編集しお届けする。
「自分らしくておもしろい」ことを考える方程式
NSC(お笑い養成所)に通う生徒やビジネスパーソンに教えている「大喜利もどき」について紹介します。大喜利もどきは大喜利の形式を利用した3ステップの頭の体操です。私も定期的に行っています。
このトレーニングを実践していけば、大喜利が得意なお笑い芸人と同じ頭の回転に近づくことができます。素早く考えることが求められるビジネスパーソンにも役立つと思いますので、楽しみながらやってみてください。
最初にざっくりとしたテーマを設定してください。たとえば、「赤いもの」「動くもの」「大きいもの」のようにすぐに思いつくもので大丈夫です。今回は、このまま「赤いもの」をお題に考えてみましょう。
お題:「赤いもの」
ステップ1 お題に合うものを書き出す
まずは、赤いもので思いつくものをどんどん書き出しましょう。たくさん出てくると思います。最低でも5つ以上は書き出すようにしてください。
例
ポスト
消防車
りんご
トマト
血液
ステップ2 書き出したものを変化させる
赤いものを出し終えたら、それらの色や形、機能を変化させましょう。
例
ポスト→白いポスト(色の変化)
消防車→急がない消防車(特徴の変化)
りんご→四角いりんご(形の変化)
トマト→石のように硬いトマト(硬さの変化)
血液→黒い血液(色の変化)
などのイメージです。
ステップ2の狙いは自分の得意な思考パターンを知ることです。「色を変えるクセがあるな」、「形を変化させる考え方が得意かも」と自分が得意な考え方を知ることで、自分の考え方の特徴を把握することができます。
私の場合だと色を変化させているものが2つあるので、「色を変える考え方」が特徴なのがわかります。
ステップ3 自分の思考の特徴を活かして別のことも考えてみる
私の場合は思考の特徴が「色の変化」なので、目についたものの色を片っ端から変えていきます。
例
茶色のトイレ(元は白色)
ピンクのカメラ(元は黒色)
金色のティッシュ(元は白色)
このような形です。
ここまでくれば、私の場合、漫才のボケとして使えるものはないかと検討ができるようになります。たとえば、
例
茶色のトイレ(ボケ)→なんか汚いな!(ツッコミ)
ピンクのカメラ(ボケ)→林家パー子さんモデルかい!(ツッコミ)
金色のティッシュ(ボケ)→どこに金かけてんねん!(ツッコミ)
とツッコミを入れてみます。粗削りかもしれませんが、同じように発想していけば、使えそうなものがあるように思います。最初はおもしろくしようとか、特殊なことをしようとかは考えなくて大丈夫です。大事なことは、自分が発想する際にどんな思考なのかを知ることです。それを反復するなかで見つけていきましょう。
大喜利が強い芸人でもいきなりおもしろいことが浮かんでくるわけではありません。何気ない単語や事柄を自分の得意な考え方のなかで組み合わせたりひっくり返して考えてみたりして、それぞれが自分らしい答えを出しています。ですから、皆さんも焦らず売れっ子芸人と同じように論理的に考えるようにしましょう。
慣れてくると、これまでの自分では思いつかなかったような発想が頭に浮かんでくることもあるはずです。もうお気づきかもしませんが、この方法は「自分らしく」考えることがベースにあるのでネタ切れになることもありません。
日々の頭の体操として続けるのもいいですし、「おもしろい人になりたい」と興味を持たれた方は、慣れてきたタイミングでハードルを上げて、「どの組み合わせにしたらおもしろいものになるか」を考えてみてください。
ビジネスでも同じで、テーマに対して自分がどのように向き合うことが多いのか「思考のクセ」を掴むことが何よりも大事です。アイデアそのものも質も大事ですが、プロセスに一度焦点を当ててみましょう。