3月に開かれる全国人民代表大会の全体会議に向けて、1月上旬に中国各地で選挙が行われ、中国共産党トップの指導者たちが選出された。習近平国家主席は今年江蘇省から出馬、満票で当選したが、江蘇省は習の出自や経歴となんの関係もない。そして前回の選挙では習は内モンゴルから当選していた。コロコロと変わるその「地元」は一体何を意味するのか?(フリーランスライター ふるまいよしこ)
中国の1月は選挙の季節、
そして3月は政治の季節
《江蘇省人民代表大会会議は昨日、第14次江蘇省全国人民大会代表144人を選出した。中央政府の推薦を受け、江蘇省から出馬した代表候補、習近平は満票で当選した……》
新華社配信のこんな記事が並んで、「中国政治のシーズン」が近づいたことに気がついた。毎年3月初めから全国政治協商会議(政協会議)と全国人民代表大会(全人代)が立て続けに、1年に1回の全体会議を開くからだ。前者は超党派の諮問機関的な位置付けだが、政策決定権はない。立法権や行政権を併せ持つ最高議決機関である後者の全人代が政策や法律を策定する。
後者の全人代の全体会議には、中国の全国各地で選ばれた「議員」人民代表約3000人が集う。このため討議らしいことはほぼ行われず、主に政府指導部が提出した議案を採決するのがその主な役割である。この最高議決機関の一員となるには、共産党の指導部メンバーであっても地方人民代表の身分を有する必要があり、このため中国共産党の政治指導者たちも各地で人民代表選挙の洗礼を受けなければならない。今年は5年に1度の改選の年に当たる。
今年の全人代では、昨秋の中国共産党大会で自ら任期規制を撤廃して3期目の総書記に選出された習近平が、やはり3期目の国家主席に就任することになっている。「台湾の選挙はその日のうちに当選者が分かる。アメリカの選挙は翌週には当選者が分かる。中国の選挙は選挙前に当選者が分かる」というネットジョークがあるくらいで、結果はすべて分かってはいても、その「儀式感」は欠かせない。さらには「満場一致」や「満票」は儀式感において大事な要素の一つなのだ。