香港島の街並み Photo:PIXTA香港島の街並み Photo:PIXTA

2019年に民主的な政治制度導入を求めた香港市民を、香港政府を使って押さえつけた中国政府。今年、香港の政治トップである行政長官になった李家超氏は、そんな香港政府のトップに立って市民デモを押さえつけた功績が認められた結果の就任だといわれている。さらに過去の記事でもお伝えしたとおり、中国政府の指示で選挙制度が大きく変わった結果、香港の立法会(日本の国会に相当)は現在、ほぼすべての議席を親中派が占めている。要は、香港の政治に関わる政治家はほとんど全員親中派、という状況なのだ。そんな香港の親中派が、最近どうも中国政府と足並みがそろわないようだ。親中派が越えられない、中国との「壁」とは?(フリーライター ふるまいよしこ)

「中国との往来解禁を!」
と声を上げだした親中派

 前回の記事で、中国政府が12月7日に発表した「新型コロナ感染予防管理措置のさらなる改善に関する通知」(以下、「新十条」)について触れた。その結果、中国全土ではほぼ一夜にして各地に散在していたPCR検査場が消え、公共交通機関や商店を利用する際に「健康コード」を提示する必要がなくなった。

 香港でもこの変化を受けて、親中派やビジネス界から、香港独自の健康コードアプリ「安心出行」を廃止し、すでに3年近くストップしている中国との自由な往来を再開すべきだという声が上がり始めた。だが、7月に誕生した李家超・行政長官政府下で医務衛生局長に就任した盧寵茂氏は、「中国国内と足踏みをそろえるつもりはない」と述べ、「安心出行アプリの使用を中止する予定は今のところない」とした。

 その直後に親中メディアが、当局がアプリ廃止に乗り切れないのは「担当責任者に『心理的に乗り越えられない壁がある』からだ」と伝えたことでちょっとした騒ぎになった。報道は「担当責任者」の実名には触れていなかったものの、誰もがそれは盧医務衛生局長のことだと受け取ったのだ。