日銀新体制でのマンション価格、「まだ上がるが急落に要警戒」と考える訳Photo:PIXTA

日本銀行の次期総裁として、経済学者の植田和男氏が起用される模様だ。不動産の購入を検討している人は、このトップ人事がマンション価格に及ぼす影響が気になるところだろう。そこで今回は、マンション価格の推移をウオッチする上で知っておきたい基礎知識と今後の展望を、歴史的背景を踏まえながら解説する。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)

次期日銀総裁人事で
マンション価格は上がるのか?

「日本政府が、日本銀行の次期総裁に植田和男氏(71)を起用する方針を固めた」との報道が流れたのは2月10日のことだった。

 その後の報道も追っていると、植田氏はインタビューなどで、現在の日銀の金融緩和政策について「適切だ」といった旨の回答をしている。

 また、植田氏の仕事ぶりは、自分の主張を通そうとするだけでなく、人の意見をよく聞き、取りまとめるタイプだという。

 他にも現時点で表に出ている情報をまとめると、当面の間、金融緩和策は継続されることが想定される。そうなると、今後しばらくマンション価格は高いままだろう。だが、いつまで一般庶民の「高嶺の花」であり続けるのだろうか――。

 その行方を知るには、不動産デベロッパーに流れている資金量を押さえておく必要がある。不動産デベロッパーに流れる資金量が少ないとマンション価格は下落し、多いと上昇していくからだ。

 今回は初心者に向けて、歴史を踏まえながら、価格変動についてざっくりと説明していこう。

 不動産業界にはこれまで、不動産事業者の倒産が相次いだ時期が2回ある。

 1度目は、1990年代前半の「バブル崩壊」前後の時期だ。不動産価格の値上がりが続いていたバブル経済下の1990年、当時の大蔵省は「総量規制」と呼ばれる行政指導を行った。

 総量規制とは、金融機関による過剰な不動産融資に規制をかけるものだ。この行政指導が行われるやいなや、不動産デベロッパーに資金が流れなくなり、高騰していた不動産価格は急落に転じた。因果関係については諸説あるが、この総量規制がバブル崩壊をもたらしたという見方もある。

 いずれにせよ、これによって資金繰りに窮し、債務超過に陥った不動産事業者は倒産の憂き目を見た。