トヨタすら白旗!三菱自とSUBARUにも迫る「値上げ危機」、“円安で輸出企業高笑い”のウソ【再編集】Photo:SOPA Images/gettyimages
トヨタ自動車の社長が、14年ぶりに豊田章男氏から佐藤恒治・執行役員に交代する。特集『トヨタ「非創業家」新社長を待つ試練』では、佐藤新社長を待ち受ける課題について、ダイヤモンド編集部の記者が徹底取材し、独自の視点でまとめた記事を紹介する。#5は、円安が原材料高・資源高を助長し業績悪化につながるリスクと、トヨタの「値上げ」実現度を検証する。

「円安=自動車メーカーに恩恵」とされたのも今は昔。かつて円高に苦しんだ自動車メーカーは、為替リスク軽減と海外マーケット獲得を狙って生産拠点やサプライチェーンの海外シフトを急いだ。ビジネスモデルが激変した今、過度な円安が原材料高・資源高を助長し自動車メーカーの業績悪化につながるリスクが顕在化している。特集『「円安」最強説の嘘』の#4では、独自シミュレーションを用いてトヨタ自動車、SUBARU、三菱自動車の「値上げ」実現度を検証した。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

※本稿は2022年4月28日に公開した記事を再編集したものです。人物の肩書や数字を含む全ての内容は取材当時のまま

3つの原材料高シナリオで暴く
「円安=自動車メーカー幸せ」の嘘

 2011年に東日本大震災が発生して以降、日本の自動車産業は「六重苦」に苛まれるようになった。六重苦とは、円高、自由貿易協定締結の遅れ、電力供給問題、環境規制、高い法人税率、労働規制のこと。中でも日系自動車メーカーを苦しませたのが、1ドル=75円台まで進んだ円高対応だった。

 だからこそ、当時の自動車メーカーの経営者は生産拠点とサプライチェーンの海外シフトを急いだ。自由貿易協定を駆使してグローバルな最適調達を実現することが、円高退治の最短ルートだったのだ。目安になったのは、1ドル=100円程度の“円高水準”ならば利益の出る企業体質にすること。労働集約的な汎用部品のみならず、トランスミッションやエンジン部品といった自動車の心臓部品までもが、海外で製造されるようになっていった。

 それから10年余り。自動車メーカーのビジネスモデルは大きく変容した。1ドル=120〜130円レベルの円安水準に達したとしても、自動車メーカーがその円安メリットを享受しにくくなっているのだ。

 円安の恩恵が限定的になった背景にはどのような事情あるのか。ダイヤモンド編集部では、トヨタ自動車とSUBARU、三菱自動車の業績に円安や原材料高がどのような影響を与えるのかを独自試算した。

 次ページでは、三つの原材料高シナリオ(楽観シナリオ、中立シナリオ、悲観シナリオ)を提示し、自動車メーカー3社がどの程度のコストアップを強いられるのかを「営業利益の増減要因分析」の図解で分かりやすく解説。原価低減力に定評のあるトヨタですら、「値上げ」を検討せざるを得ないほど追い込まれている実態が明らかになった。