日野自動車で続く“不正ドミノ”、親会社トヨタが「被害者面」では許されない理由【再編集】Photo:SOPA Images/gettyimages
トヨタ自動車の社長が、14年ぶりに豊田章男氏から佐藤恒治・執行役員に交代する。特集『トヨタ「非創業家」新社長を待つ試練』では、佐藤新社長を待ち受ける課題について、ダイヤモンド編集部の記者が徹底取材し、独自の視点でまとめた記事を紹介する。#6は、トヨタグループの日野自動車で次々と発覚した不正問題の元凶に迫る。

2022年に入り、日野自動車で不正が次々と発覚、出荷停止の車種が続出した。これについて、親会社であるトヨタ自動車は、自らが「被害者」であるかのような主張を続けているが、日野の社員は「不正の一因はトヨタにある」と憤る。特集『日野“陥落” トラック大異変』(全5回)の#1では、両社の20年余りの歴史と人事をひもときながら不正の元凶に迫る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

※本稿は2022年11月7日に公開した記事を再編集したものです。人物の肩書や数字を含む全ての内容は取材当時のまま

組織腐敗が招いた日野の不正発覚ドミノ
親会社のトヨタは「被害者」か

 国内向けトラック全量出荷停止――。

 トラック業界をけん引する日野自動車に激震が走った。エンジンの排出ガスや燃費に関する認証申請において、約20年にわたる広範囲の不正が判明し、一部の車種が出荷停止となったのだ。

 日野がこの不正を公表した後、国土交通省の立ち入り検査により、排出ガス劣化耐久試験に関する不正行為が追加で発覚。この「不正発覚ドミノ」により、一時は国内向け全量が出荷停止になるという空前の事態に見舞われた。

 長年の不正を見過ごしてきた日野の組織体質について、自動車産業を所管する国土交通省の職員は「これだけ大規模な不正をしてきた日野が変わるのは容易ではない」と日野の置かれた状況の厳しさを指摘する。

 一方、親会社であるトヨタ自動車は、自らが「被害者」であるかのような態度に徹している。それは、今回の不正が明るみに出た際の豊田章男社長のコメントからも明らかだ。

「今回日野が起こした認証試験不正は、お客様をはじめ全てのステークホルダーの信頼を大きく損なうものであり、日野の親会社としても、株主としても、極めて残念に思います。長期間に亘りエンジン認証における不正を続けてきた日野は、550万人の仲間として認めていただけない状況にあります」

 この発言からは「トヨタは日野の不正とは無関係」という主張が透けて見える。

 ところが、日野の現役社員からは「不正の一因はトヨタにある」との憤りの声が上がる。

 トヨタが日野を子会社化してから21年。トヨタは、今回の不正とは本当に無関係といえるのだろうか。

 次ページでは、両社の歴史と人事をひもときながら不正の元凶に迫る。日野の歴代6政権の幹部人事を綿密に分析すると、驚くべき事実が明らかになった。