インドネシア経済は2022年に5%超の成長率を記録し、9年ぶりの高成長となった。しかし、現状を詳細に分析していくと、23年の成長率は鈍化が避けられそうにない。内需、外需共に景気の足を引っ張りそうな材料が少なくない。(第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト 西濵 徹)
2020年は20年振りの
マイナス成長だったが
インドネシアのGDP(国内総生産)に占める輸出の割合は2割程度と、ASEAN(東南アジア諸国連合)のなかでは経済構造の外需依存度は比較的低い。一方、財輸出の3割弱を原油や天然ガスをはじめとする鉱物資源が占め、経済は商品市況の影響を受けやすい特徴を有する。
コロナ禍に際しては、同国でも感染が拡大して感染対策を目的とする行動制限が課されたことで家計消費など内需が下振れした。加えて、世界経済減速による商品市況の調整を受けて輸出に量、および価格の両面で下押し圧力が掛かり、2020年の経済成長率は22年ぶりのマイナス成長に陥った。
その一方、同国政府は経済の資源依存体質からの脱却、資源関連産業のすそ野拡大による高付加価値化と雇用機会の創出を目的に、20年1月からニッケルの未加工鉱石の輸出禁止に動くなど『資源ナショナリズム』とも呼べる動きをみせている。
なお、同様の措置は14年にすべての未加工鉱石を対象に実施されたが、その後は対内直接投資の萎縮を招くとともに、輸出額も伸び悩む事態に陥ったため、17年に事実上撤回に追い込まれた経緯がある。
今回は同国が世界埋蔵量、および生産量ともに世界1位で、同国に代わる調達先を探すことが難しく、世界的な需要拡大が期待されるニッケルを対象としたため、足下では資源関連を中心とする投資拡大につながるなど、コロナ禍からの景気回復を促す一助となっている。
同国経済は財政赤字と経常赤字の『双子の赤字』を抱えるなど、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)のもろさが国際金融市場を取り巻く環境に揺さぶられやすい一因となってきた。
しかし、世界経済のコロナ禍からの回復を受けた商品市況の底入れに加え、未加工鉱石の輸出禁止に伴う高付加価値化も追い風に輸出が押し上げられ、量、および価格の両面での輸出拡大を受けて財貿易収支の黒字幅が拡大し、21年末以降の経常収支は黒字基調に転じるなど対外収支構造は大きく改善している。
こうした構造変化を背景に、インドネシア経済は9年ぶりの高成長を記録した。好調さを継続できるのか。次ページ以降、検証していく。