オミクロン株の拡大で新規感染者数は急拡大しているものの、経済の正常化を進めているインドネシア。景気も回復基調にある。しかし、原油高や世界的な金融引き締めの状況下で回復に水を差す懸念材料も浮上しつつある。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)
ワクチン接種は他のASEAN
諸国に比べ遅れ気味
インドネシアを含むASEAN(東南アジア諸国連合)は、一昨年来の新型コロナ禍に際してたびたび感染拡大に直面するとともに、その余波を受ける形で深刻な景気減速に見舞われた。
しかし、足元では中国によるいわゆる「ワクチン外交」や、日本や米国によるワクチンの無償供与などを通じてワクチン接種が前進していることを受け、ワクチン接種を前提に一定の行動制限を課しつつ経済活動を維持する「ウィズ・コロナ」戦略が採られている。
なお、インドネシアについては、人口の多さや1万を上回る島から成り立つ地理的特性も影響して、ワクチン接種率はASEAN主要6カ国のなかで最も低い水準にとどまる。
さらに、欧米など主要国のみならず、ASEAN諸国においても早期にワクチン接種を終えた人を対象に追加接種(ブースター接種)の動きが広がるなか、同国でも昨年9月に開始されているものの、足元における接種率は2%台にとどまっている。
こうした状況ではあるものの、同国の新規陽性者数は昨年7月半ばを境に頭打ちしており、人口100万人当たりの新規陽性者数(7日間移動平均)も昨年7月18日時点の184人をピークに減少に転じたほか、昨年11月初旬から今年1月初旬まで約2カ月にわたって1人で推移するなど落ち着いた推移が続いた。
よって、感染動向の落ち着きも追い風に昨年末にかけて人の移動は持ち直しの動きを強め、新型コロナ禍を受けて下押し圧力がかかった景気は一転して底入れの動きを強めてきた。