目をなるべくリラックスさせたほうがいい理由
――「自力整体」で骨盤調整を続けたことにより、お子さんを授かることができた、という方も多くいらっしゃるそうですね。
裕:なかなか妊娠できなかった方が妊娠されたケースは、非常に多いですね。出産もラクになります。
真理恵:ある生徒さんは、1人目の出産は36時間もかかる難産でしたが、その後「自力整体」で骨盤調整をおこなったら、2人目は安産で2時間のスピード出産だったんです。
――それはすごい。骨盤調整は重要ですね。
裕:他にも「自力整体」では、メガネをはずしたり、夜は照明を落として、薄暗がりで生活するよう指導しています。
目と骨盤まわりの筋肉は、東洋医学でいう「経絡」でつながっていて、腰痛や便秘のほか、とくに女性は生理や妊娠に関係する、骨盤にある仙腸関節の動きと深く関わっています。
ですから、目の緊張は骨盤まわりの緊張につながるため、不調が出やすいわけです。目はなるべくリラックスさせたほうがいいんですね。
――なるほど。ところで、裕先生は20代のころ、評判の鍼灸師・整体治療家として活躍されながらも、自分の力で治す必要性を感じ「自力整体」を研究開発されたそうですが、そのきっかけを教えてください。
裕:私は23歳から27歳のときまで、神戸で治療室をやっていたんです。どんどん患者さんが増え、一日20人以上治療していました。
経済的にも安定してよかったのですが、リピーターばかりなんですよね。リピーターばかりっていうことは、それって治せていないということですよね?
――たしかに、そのとおりですね。
裕:でもリピーターがいなければ、経営は成り立たないわけです。
「治せる治療家はリピーターがいない」、一方「治せない治療家はリピーターがいて繁盛する」。そこに虚しさを感じたんですね。
真理恵:当時、父はそれにストレスを感じて、お酒を飲みすぎて自分自身も体を壊したんですよね。
裕:そう。虚しくておもしろくないものですから、仕事帰りに毎晩飲み歩いていたんです。
そこで考えたのは、マンツーマンで治療するよりも、1ヵ所にたくさんの患者さんを集めて、「自分で治すには、こういうふうにしたらいいんですよ」という教育が大切だと思ったわけです。
そこから、効果の高い施術をだれもが自分でできるように、研究・改良を重ね、1989年に「自力整体」が完成したんですね。
「自力整体」が長く愛され続ける3つの理由
――その「自力整体」が、ほんとうに長く愛され続けています。人気の理由はなんでしょうか?
裕:みなさんに愛される理由は、3つあると思うんですね。
1つは、やっていて苦しくないということ。ヨガのように形(ポーズ)を求めませんので、マッサージするような感覚で気持ちがいいわけです。
2つ目は、ご高齢の方でも、体が硬い方でも、簡単にできるということです。
3つ目は、即効性です。やったらすぐに軽くなる、痛みが消える。
まとめると、気持ちがいい、簡単、即効性、この3つが人気の理由だと思います。ほかのボディワークにはない特徴があると私は思っています。
――真理恵さんはいかがでしょうか?
真理恵:もう1つ付け加えるとしたら、進化しているから、おもしろいと思います。
父はもうすぐ70歳になるのに、常に新しいことを学んでいて。「自力整体」の軸は変わらず、より効果が得られるようアップデートしていて、だからやっている方も飽きないんですね。
生徒さんも、全国のナビゲーター(指導者)さんも、アップデートされた「自力整体」を受けることができるので、そこが長く愛されている理由なのかなと思います。
――ところで、『すごい自力整体』は、すごい勢いで重版を重ねていますが、今の感想はいかがですか?
裕:20年ほど前、私が初めて「自力整体」の本を出版したときも20万部ほど売れて。多くの方に喜んでいただけたんですね。
ですから矢上真理恵の本も、新たな目線で作られていますので、多くの方のお役に立てるのではと思っています。
――真理恵さんはいかがですか?
真理恵:私は正直、驚いています。でも、様々な感想をいただいて感じているのは、今この世の中で「自力整体」は求められているんじゃないかな、ということです。
なぜなら、今の時代は新しい情報や刺激があふれ、しっかり自分の感覚で取捨選択していかないと、思わぬ方向に流されてしまいます。ですから、自分を整えることは、とても大切で。そのためにも「自力整体」をおこない、自分と向き合う時間を少しでもつくることに、意味があるのかなと思います。
――「自力整体」をおこなうと、体の硬さ、冷えに気づかされ、自分をもっとケアしてあげようという気持ちになりますね。
裕:これまでの日本人というのは、痛みや不調があれば「なんでも病院」という感じで、「健康」を、「医療」に依存する傾向の強い国民だったと思うんです。
しかし、だんだん「自分の体は自分でケアしていくのが当たり前」という意識に近づいてきているような気がしています。世代交代するにしたがい、「自力整体」のように、「自分で自分をケアしていく」という考えが、これから浸透していくような気がします。
――「自力整体」を考案されたのが35年前でしたから、発想が先進的でしたね。
裕:私が最初「自力整体」の教室を立ち上げたときには、大海原を小船で漕ぎだすような、そんな気持ちで、「これいけるかな」とビクビクしながらやったものですけど、それから35年経って、船が客船ぐらいの大きさになったような気がしますね。
ですので、新しい世代に向けて、矢上真理恵がより進化した「自力整体」を提供できると感じています。
――より進化した「自力整体」の魅力を存分に味わえるのが、この『すごい自力整体』ですね。真理恵さんは本の制作にあたり、新たな発見はありましたか?
真理恵:じつは、この本の制作を進めるにあたり、父の後継者としてのプレッシャーや不安があったんです。幼少期から「自力整体」は父の側で見てきたので基本はわかっていても、本格的に父のもとで学ぶようになったのは、30代になってからです。
ですから、「著者は私でいいのかな? 父のほうがよいのではないか?」など迷いがありました。しかし出版後、多くのみなさんから感想を寄せていただき、私の目線だからこそ伝えられる「自力整体」があったんだと、気付かされたんです。
たとえば、私自身「自力整体」の指導者になる前は、まったく別の仕事をしていて。読者のみなさんと同じように、痛みや不調を抱えながら働いていたんですね。だからこそ、距離の近さを感じていただけたのだと思います。
――著書でも、体調を崩されたとき「自力整体」に救われたエピソードが書かれていましたね。
真理恵:ニューヨークやロンドンで、世界で活躍できるデザイナーを目指し働いていたとき、心身のバランスをくずしてしまったんです。
ベッドから起き上がれないほど辛かったのですが、「自力整体」で体調を立て直すことができたんですね。
【次回に続く】
『すごい自力整体』では、この他にも、整体プロの技法を使って、コリや痛み、ゆがみを解消するワークを多数掲載しています。(★一部動画でもご視聴いただけます)