むくみや冷え、コリ、痛み、だるさ、疲れ、更年期の不調、不眠といった、なんとなくの不調。『すごい自力整体』の著者・矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語る。「自力整体」とは、人の手を借りずに、「整体施術のプロの技法」を自分におこなえるメソッド
体のゆがみを正しい位置へ戻し、筋肉や関節のコリをリリースして、不調を根本から取り除くワークだ。現在、若い世代から高齢の方まで約1万5000人が実践している。東洋医学をベースにしながら効率的に問題解決するのも人気の秘訣。なぜ「自力整体」はいいのか?(構成/依田則子 撮影/榊智朗)
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家

「冷たくて、硬い体」は悲鳴をあげている。【整体プロがすすめる】血流が改善する超カンタンな方法

「冷たくて硬い体」に悩まされた私

――矢上さんの著書『すごい自力整体』には、「あったかくて、柔らかい体」が自力整体のゴールと書かれていました。しかし、数年前の矢上さんは「冷たくて硬い体」に悩まされ、最悪の状態だったそうですね。

矢上真理恵(以下、矢上):20代から30代前半の私は海外で活躍できる衣装デザイナーを目指し、ニューヨークやロンドンで夢を追いかけていました。眠る間も惜しくて睡眠はソファで仮眠程度、体は重だるくて疲労困憊。ある日、とつぜん心身のバランスをくずして、動けなくなってしまったんです。

――本には、体は冷たく硬直しているのに、見てみぬふりをしていたと書いてありました。

矢上:体には常に力が入って筋肉が凝り固まっていて、手足もキンキンに冷えている状態でした。血液のめぐりが悪いせいか、偏頭痛もひどくて。なぜか右目の奥がいつもズキズキ痛くて、目を開けるのもつらい日は、半目でやりすごしていたんですよ。それでも仕事最優先で休まず働いていました。交感神経が優位になっていたんでしょうね。

――しばらく起き上がれない状態になったそうですね。その状態から、「自力整体」をやってみようと思ったきっかけは何でしょうか。

矢上:当時、ロンドンで暮らしていたんですが、せっかく仕事のチャンスをつかんだのに、体も心も動かなくて。アパートのベッドの上で「このままでいいのだろうか……」とぼんやり考えながら、天井を見つめていたんです。そのとき、なぜかはじめて、「自力整体をしたい」と感じたんです。いま思えば、冷たくて硬直した体が悲鳴を上げていたんですね。

―そのとき、どのような「自力整体」をおこなったのですか?

矢上:これは「自力整体」の初歩的な動きなんですが。正座をしてひざを開き、両手をお腹に当て息を吐きながら、ゆっくりゆっくりお辞儀をするように床におでこをつけて、その状態で両手をお腹に当てたまま、お尻をゆすりました。そのままお腹をマッサージしていたら、呼吸がゆったりしてきて。「久しぶりに自分の体を触ったなあ」っていう感覚もありました。

――その時、体はどのような反応でしたか?

矢上:驚いたのは、体にあったかい血液がどくどくどくっと流れる感覚を味わったんです。よっぽど私の体は冷えていたのですね。「いつからこんなに冷たくて硬直した状態になっていたのだろう……」というのが率直な感想です。私の生徒さんの多くの方も、最初のレッスンの日に同様の感想を抱かれたんですよ。

――それはすごい! 血流がいっきに流れるイメージですね。ちなみにロンドンでのその後の体調の変化を教えてください。

矢上:「自力整体」をおこなったその夜は、ずっと眠れずにいたのに、久しぶりに熟睡できたんです。全身ゆるめて脱力したことで、副交感神経が優位になり、眠れたのでしょう。それから毎晩、自力整体をやり続けました。体温が上がり、血のめぐりもよくなったせいか、モヤモヤした気分も晴れていき、だるさや冷えも気にならなくなって、心も体も羽が生えたように軽くなったんです。ずっとつらかった右目の奥の痛みも出なくなり、自力整体のすごさを、再発見しました。

「冷たくて、硬い体」は悲鳴をあげている。【整体プロがすすめる】血流が改善する超カンタンな方法矢上真理恵(やがみ・まりえ)
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。 写真/榊智朗

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『DVDで覚える自力整体』『DVD3分から始める 症状別 はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。