賃金の伸びが頭打ちとなったり、高水準から低下したりする現象が先進国全体で見られる。これは中央銀行にとって朗報だ。賃金が物価を押し上げ、それがまた賃金を押し上げる連鎖的上昇が起きている兆しはない。そのため、失業率が大幅に上昇することなくインフレ率が低下する可能性が高くなっている。  ただこれは、労働者にとってあまり好ましいことではない。国際労働機関(ILO)の推計によると、主要先進国全体の2022年の賃金上昇率は20~21年の水準を上回ったものの、物価上昇率には届かなかった。労働者の購買力(インフレ調整後の平均賃金)は、昨年は新型コロナウイルス流行前の2019年より低かったという。