インスタントラーメンも
少しの工夫で高栄養食に

 シンプル調理の肝になるのは、冷凍野菜や缶詰など手軽な食材を活用することだ。こうした市販のものを使って料理することに、いまだに罪悪感を持つ人も少なくないだろう。

「まじめに料理をしてきた主婦の方に、カット野菜や水煮野菜を提案すると『カット野菜を使うなんて手抜きしていいのだろうか、やっぱり泥付きの里芋をむく方が体にいいのでは』とおっしゃることがありますが、衛生的に管理された施設でカットし洗浄された野菜は、病院給食の現場でも使われています。料理で一番面倒なのは、野菜の下ごしらえだと思います。その煩わしさを解決してくれるカット野菜はまさに自炊の味方ではないでしょうか」

 カット野菜以外にも、長期保存の効く缶詰や解凍するだけで使える冷凍野菜などを活用して調理の負担を減らすことが、特に高齢になってからは重要だろう。また、一般的に「体に悪い」と言われるものも、食べ方次第では栄養バランスを整えることができるという。

「よく『インスタントラーメンや冷凍食品なんて体に悪いわよね?』と聞かれることがあります。毎日毎食インスタントラーメンを食べるのはさすがに塩分のとりすぎで体に悪いですが、スーパーに売っているような一般的な食品で『これを食べたらダメ』というものはありません。こんなことを言うと驚かれるのですが私もインスタントラーメンが大好きです。ただ食べ方に少し工夫をするのがポイント。たとえばお気に入りの塩ラーメンを食べるときは、ちくわ2本と冷凍ほうれん草をひとつかみ、鍋に足します。そうすると『たんぱく源+野菜+主食』の三つがちゃんとそろった健康的な一食になります」

 インスタントラーメンで気になる塩分を減らすためには、スープを飲みすぎない、飲み干さないこと。さらに翌日はサンドイッチやパスタにするなど、塩分量の多い食品が続かないよう意識することも大切だ。

「『こう食べなければいけない』と型にはめず『必要な栄養は3日単位くらいで大体取れていればOK』と柔軟に食生活を楽しんでください。高齢になるほど、栄養状態がその方の生活に大きな影響を与えます。調理が苦手な方も『たんぱく源+野菜+主食』の公式で、いきいきとした生活を手に入れましょう」

 あまり難しく考えず、「三つの要素を満たした手抜き料理」で無理なく栄養バランスを整え、「隠れ低栄養」状態を防いでほしい。