【小児科医が教える】「亜鉛不足の子ども」が増加中！ 長期的な不調の原因に

「子どもには、少しでも体によいものを食べさせたい！」ですよね。
でも、ごはんは毎日のこと。なるべくシンプルで簡単に済ませたいものです。
この連載では、『医師が教える　子どもの食事　５０の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生が、最新の医学データをもとに「子どもが食べるべきもの、避けるべきもの」をご紹介します。
不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験から、本当に子どもの体と脳によい食事がわかります。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。

子どもの10人に1～2人が病的に欠乏中？

　ある研究では、約13％の子どもに亜鉛欠乏が見られました。これは10人中1～2人が、病的な亜鉛欠乏であるということです[*46,47]。私のクリニックでの検査では、より高率の結果が出ています。

　子どもだけでなく、日本人は平均して亜鉛が不足しています[*48]。鉄、亜鉛などのミネラルは、食品からの吸収が難しいものが多く、食事だけで改善しようとすると何ヵ月、あるいは何年かけても、改善しないことがあります。血液検査で亜鉛が欠乏していることがわかったら、亜鉛を補う薬やサプリメントを導入するのも手です。

亜鉛が足りないとどうなるの？

　亜鉛が不足すると皮膚炎、口内炎、抜け毛・脱毛などが起きやすくなります[*22]。新型コロナウイルス感染症の後遺症に脱毛がありますが、当クリニックで血液検査をして亜鉛が欠乏している方ほど、脱毛の後遺症が見られました。その後、亜鉛をしっかり補充する処方をしたところ、治っていきました。

　もちろん、新型コロナウイルス感染症と関係なく、抜け毛の悩みで受診される方も、亜鉛が欠乏していることがほとんど。この場合も、補充することでゆっくりと毛が生えていきます。

　また、亜鉛の欠乏とうつや不安が関連しているというデータが複数あります[*23]。ほかにも、亜鉛が欠乏している人のほうが新型コロナウイルスに、より感染したという研究論文が多数、出ています[*49]。さらに、亜鉛は骨の成長にも関わるので、不足すると成長に影響します。

　このように、亜鉛不足、欠乏はさまざまな問題を引き起こします。亜鉛不足は血液検査ですぐにわかるので、心配なときは調べてみるのもよいでしょう。

亜鉛が豊富に含まれるのは牡蠣

　食品から亜鉛不足を改善するのは、時間がかかります。深刻な亜鉛欠乏になる前に、食品からも亜鉛を積極的に摂取していきましょう。

　亜鉛が豊富に含まれるのは牡蠣。手に入る機会があったら、お好みの調理法で食卓に並べてみましょう。

　ほかにも、うなぎ、いわし、海藻、枝豆、すりゴマにも亜鉛が含まれています。献立にぜひ加えてみてくださいね。

食べ合わせについて

　亜鉛と一緒に緑茶やコーヒー、穀類・豆類を摂ると、亜鉛の吸収率が下がることがわかっています。ただ、吸収阻害を気にしすぎても食事になりません。

　不足、欠乏していないか血液検査で調べて、不足がわかったら、食べ合わせを気にして補っていくのも一案です。亜鉛を含む食材をしっかり食べることで欠乏は防げます。すりゴマは亜鉛を豊富に含むので「毎日、すりゴマを大さじ1杯」など、手軽に取り入れられるところから始めるのもよいですね。

　このほかにも『医師が教える　子どもの食事　５０の基本』では、子どもの脳と体に最高の食べ方、最悪の食べ方をわかりやすく紹介しています。

（本原稿は伊藤明子著『医師が教える　子どもの食事 ５０の基本』から一部抜粋・編集したものです）