文部科学省は全国の教育委員会に対し、悪質な「いじめ」と称される行為について、速やかに警察と連携して対応するよう求める通知を出した。警察に相談や通報をするべき事案として具体的に19事例を挙げ、どの罪名に該当する可能性があるか明示した。実は「大津いじめ自殺事件」をきっかけとして2013年に制定された「いじめ防止対策推進法」は、犯罪が疑われる場合は警察に通報するよう求めている。だが、学校の不適切な対応で児童や生徒が自殺に追い込まれたケースもあり、看過できないと判断したようだ。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
警察に相談・通報すべき
具体的な19事例とは
冒頭「いじめと称される行為」と紹介したのは、筆者は過去に何度か「“いじめ”は犯罪」と指摘してきたからだ。「いじめ」という言葉は陰湿かつ悪質な犯罪行為を、学校や教育委がオブラートに包むための「保身の呪文」でしかないのだ。
かつて筆者が全国紙のデスクだった時代に、「いじめ」と書いた原稿を送ってきた記者に対し、「同級生を殴って重傷を負わせた暴行問題で~」と差し替えを指示したこともある。
以下、これまでダイヤモンド・オンラインで紹介してきた記事を参考にしていただきたい。
「旭川中2女子凍死」で認定された加害生徒の陰湿手口、大人たちの許されぬ行為も
神戸の中3女子いじめ自殺、市教委「証拠」隠蔽工作はあまりにも情けない
「大津いじめ自殺」が世に問うた、隠蔽する大人たちの「振る舞い」
鹿児島男子高校生「いじめ」自殺、県と県教委で判断が分かれた理由
警察に相談や通報をするべき19事例とは次の通りだ(一部は筆者が加筆修正)。
(1)殴ったり蹴ったりする=暴行罪
(2)ズボンを脱がす=暴行罪
(3)刃物で切りつけてけがをさせる=傷害罪
(4)断れば危害を加えると脅し性器や胸、お尻を触る=強制わいせつ罪
(5)断れば危害を与えると脅し現金を巻き上げる=恐喝罪
(6)同様にオンラインゲームのアイテムを購入させる=恐喝罪
(7)靴や体操服、教科書などを盗む(隠す)=窃盗罪
(8)現金を盗む=窃盗罪
(9)自転車を壊す=器物損壊罪
(10)制服を切り裂く=器物損壊罪
(11)無理やり危険な行為をさせる=強要罪
(12)裸の写真や動画を拡散すると脅す=脅迫罪
(13)ネットに個人を誹謗中傷する悪口を投稿する=名誉毀損(きそん)罪か侮辱罪
(14)「死ね」などと言って自殺に追い込む=自殺関与罪
(15)性的な写真や動画を撮影してスマホなどに送らせる=児童買春・ポルノ禁止法違反罪
(16)友人に転送する=児童買春・ポルノ禁止法違反罪
(17)SNSのグループに拡散する=児童買春・ポルノ禁止法違反罪
(18)スマホに保存する=児童買春・ポルノ禁止法違反罪
(19)元交際相手と別れた腹いせに性的な写真や動画をネットに投稿する=私事性的画像記録提供罪(いわゆるリベンジポルノ防止法違反罪)