FRBPhoto:123RF

インフレに対するFRBの危機感
景気オーバーキル・リスクも

 これまで予想以上に持ち堪えている世界経済に影を落とすのは、米国における金融引締めが長期化し、景気をオーバーキル(過度に減速)してしまうリスクだ。

 米国のインフレは、明らかにピークアウトしているが、サービス価格を中心に下げ渋っている。家賃などが利上げによる不動産市場の調整で明確に低下するには時間がかかる。

 賃金上昇率も低下傾向にあるが、米連邦準備制度理事会(FRB)を安心させる水準にはほど遠い。FRBはインフレ期待が高まり、賃金と物価の上昇スパイラルに発展すると取り返しがつかないという強い危機感を持つ。そのリスクがなくなるまでは、景気への悪影響を度外視して引締めを続ける覚悟だ。

 オックスフォード・エコノミクスは、FRBが5月に利上げを行った後に、長い据え置き期間に入るとみている。年内といった早期の利下げ転換がないと考えるのは、インフレのリスクが完全に払拭されたと自信をもって判断できない状況が長く続くとみるためだ。

 実際、過去60年間にわたって現局面のように幅広い品目で価格が、短期間に大幅に上昇した局面(77例)を主要国から集め、利上げ後のインフレの足取りを分析すると、当初は急速にインフレ率が低下しても、その後、下げ渋るケースが大半だ。

 インフレがピークを付けた3年後に、急上昇前の伸び率にまで低下したのは1/3に過ぎない。政策金利の動きをみても、インフレがピークを付けた後、1年以内に利下げに転じた事例も1/3に過ぎない。利下げ後引締めに逆戻りしなかったケースは、1/5程度ともっと少ない。