今、人気の「自力整体」人の手を借りずに、「整体施術のプロの技法」を自分におこなえるメソッドだ。痛みや不調を解決するワークを紹介した『すごい自力整体』は、大きな反響を呼んでいる。今回、出版を記念して著者の矢上真理恵さんと対談してくださったのは、「自力整体」の生みの親・矢上裕さん。矢上真理恵さんのお父様でもある矢上裕さんは35年前、鍼灸師・整体治療家として治療しながら、効果の高い施術を自分におこなえるように改良し「自力整体」を完成。著書は25冊を超える。今回『すごい自力整体』の監修者として参加。対談の第6話は、「開脚前屈できない人は便秘がち? 整体プロおすすめ排泄力を高める2つの習慣」です(構成/依田則子、写真/榊智朗)
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家

「冷たくて、硬い体」は太りやすい? 整体プロがすすめる排泄力が高まる2つの習慣

「内臓疲労」のある人の体は、硬く冷えている

――矢上さんの著書『すごい自力整体』のワークを就寝前におこなうと体がポカポカして、朝まで熟睡できました。

矢上真理恵(以下「真理恵」):それはよかったです。全身ほぐれて血流がよくなるから熟睡できるんですね。夜中トイレに起きる回数が減ったという声もたくさんいただきます。

――ところで私は体の硬さが悩みです。「自力整体」を続けていけば体は柔らかくなるでしょうか?

矢上裕(以下「裕」):もちろんカチカチに硬い方でも、続けていただくと関節や筋肉は柔らかくなりますよ。

 しかし食べすぎ、飲みすぎ、夜食グセのある人はダメです。胃腸に疲れがある人は、「自力整体」だけでは難しいですね。

――体の硬さと胃腸は関係しているということでしょうか?

裕:そうです。内臓疲労のある方の特徴は「冷えて硬い体」です。体の中で交通渋滞がおきていて、便秘がちで太りやすい体ということです。東洋医学では、内臓が疲れると「気」や「血液」の流れも滞ると考えられています。

 私たちの体には「経絡(けいらく)」という「気」を流すパイプのような筋道が全身をめぐっています。五臓六腑(ごぞうろっぷ)と呼ばれる内臓のどこかに不調が出れば、「気」や「血液」の交通渋滞がおきて、同じ経絡上にある関節や筋肉が硬くなり、痛みやコリが発生するというわけです。

 たとえば胃が疲れていると胃経(胃を通る経絡)を流れる「気」は胃の修復活動で忙しくなり、同じ経絡上にある股関節やヒザが痛くなる

 さらに大腸の働きも鈍くなるため滞留便の重さで腸は下垂。その結果、腹膜が下に引っぱられ肋骨(ろっこつ)が縮んで背中が丸くなり、肩や首の筋肉は引っぱられてコリや痛みが発生します。

――そういえば胃腸の調子が悪いときは自然と背中が丸くなるような気がします。

裕:この内臓疲労に関しては、ボディワークやヨガを教えている方のほとんどは、あまり言及していないように感じています。もちろんきちんと言及されている方もおられますが。

 食べ方の悪さ、排泄の悪さを放置したままでは、どんなに体にいい運動だとしても効果は出にくいと思います。そもそも胃腸が疲れている方は、体を動かしても硬くてつらいはずですから。

 飲食の不摂生を続けながらボディワークやヨガをおこなうのは、泥水の中で洗濯をするようなもの。ですから、まず取り入れるべき習慣は、「胃腸の休息」です。胃腸を整えれば関節や筋肉は柔らかくなり、体の中の交通渋滞も解消、つらい症状も早くラクになりますよ。

――「胃腸の休息」は断食などがおすすめでしょうか?

裕:断食もいいですが実際やるのは難しいですよね。胃腸の疲れをとるには「自力整体」の整食法をすすめています。

 やることは次の2つ。

 整食法1:食事はなるべく寝る3時間前までに終わらせ空腹で寝る
 整食法2:朝食は固形物を控え、飲み物・スープ・おかゆなど

 要するに、この方法で内臓の休息時間を増やすというわけですね。胃腸の疲れをとる他に、滞留便の排泄も活発になるのでお腹もスッキリしますよ。

「冷たくて、硬い体」は太りやすい? 整体プロがすすめる排泄力が高まる2つの習慣矢上真理恵(やがみ・まりえ)写真左
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『DVDで覚える自力整体』『DVD3分から始める 症状別 はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗