今、人気の「自力整体」人の手を借りずに、「整体施術のプロの技法」を自分におこなえるメソッドだ。痛みや不調を解決するワークを紹介した『すごい自力整体』は、大きな反響を呼んでいる。今回、出版を記念して著者の矢上真理恵さんと対談してくださったのは、「自力整体」の生みの親・矢上裕さん。矢上真理恵さんのお父様でもある矢上裕さんは35年前、鍼灸師・整体治療家として治療しながら、効果の高い施術を自分におこなえるように改良し「自力整体」を完成。著書は25冊を超える。今回『すごい自力整体』の監修者として参加。対談の第四話は、こんな人は老けこみやすい? 整体プロが教える「やってはいけない3つの習慣」についてです。(構成/依田則子、写真/榊智朗)
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家

こんな人は老けこみやすい? 整体プロが教える「やってはいけない3つの習慣」

今すぐやめるべき「気」を消耗させる3つの習慣

――矢上裕先生のブログには、<「気」が少なくなると、老け込みやすくなる>と書かれていてドキッとしました。そもそも「気」とは何でしょうか?

矢上裕(以下「裕」):古くから中国では「仙人は霞(かすみ)を食って生きている」なんて言われていますよね。霞は「気」を表わすものなんです。

 仙人は「気」をうまく取り入れて気力を保ち、生きながらえるということですね。「気」は目に見えないものですが、東洋医学では<生命を活性化する源のようなもの>と考えます。

 人は年を重ねると「気」の量が少なくなる。この「気」が尽きたときが、死を迎えるときです。

 しかし「気」が不足すれば、まだ若い人でも老け込んで見えます。現代人は、「気」が足りていない方が多いように見えますね。長時間のデスクワークやスマホ、運動不足による筋力低下で、「冷たくて、硬い体」になっているせいです。

――「冷たくて、硬い体」というのは、血液やリンパの流れが滞っている体のことですね?

裕:そうです。「気」は、体のすべての流れを動かす燃料みたいなもの。要するに、滞っている体は「気」が足りないというわけです。

 ですから「気」を充実させれば、「あったかくて、柔らかい体」になる。「自力整体」は、そこがゴールなんですね。

――なるほど。真理恵さんの著書『すごい自力整体』も「気」の活性化に役立ちそうです。

矢上真理恵(以下「真理恵」):そうですね。「気」については、父は東洋医学のエキスパートなので、その知見を活かしながら合理的に役立つワークを厳選して紹介しています。

――ところで「気」が少なくなると、どんな不調がおこりやすいでしょうか?

裕:血液、汗・尿・便といった体内の水分の流れ(老廃物の排泄)が悪くなり、コリや痛み、冷え・むくみ、便秘といった不調が出やすくなります。

――その「気」を消耗させないために、今日から何をしたらよいでしょうか?

裕:気を消耗させる3つの習慣を取り除くことがなにより大切です。

 1つ目は、食べすぎ、飲みすぎ、飲食の不摂生です。これが、一番大きな原因です。胃腸が弱ると「気」がどんどん減少していきます。

 2つ目は、怒り、恐れ、悲しみ、心配事など、感情の使いすぎです。よく「気を使う」とか、「気が滅入る」と言うじゃないですか。そのような感情的なエネルギーの消耗も「気」を減らす原因になります。

 3つ目は、運動のしすぎです。ウォーキングや筋トレなどをやりすぎて筋肉を使いすぎると「気」が消耗します。体を「きたえる」という言葉があります。漢字で書くと「鍛える」。

 しかし、我々東洋医学では、「きたえる」は、「気が絶(た)える」と書くんです。気が絶(ぜっ)するという意味ですね。運動はほどほどが大事。それが「気」を消耗させない秘訣です。

こんな人は老けこみやすい? 整体プロが教える「やってはいけない3つの習慣」矢上真理恵(やがみ・まりえ)写真左
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『DVDで覚える自力整体』『DVD3分から始める 症状別 はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗