闇バイトで集められた集団が、一軒家に押しかけて強盗殺人を行う痛ましい事件があった。心のどこかで、このニュースを他人事のように捉えている人がいるかもしれないが、決してそうではない。不審者はあらゆる場所に潜んでいて、誰しもが路上強盗などの標的になり得る。そうした犯罪行為から身を守るための「たった一つの方法」を危機管理のプロが伝授する。また、防犯グッズの携帯といった日本で一般的な防犯対策が的外れである理由についても解説する。(国際警備会社「CCTT」代表取締役 小山内秀友)
「カバンをたすき掛けに持つ」など
安易な防犯対策は通用しない
「路上強盗」と聞くと、多くの人が、中年男性を狙った「オヤジ狩り」や、女性・高齢者を狙った「ひったくり」を連想すると思います。
そして、これらの行為には、「不良グループのような集団には近づかないようにする」「カバンをたすき掛けに持つ」「自転車のカゴにネットを掛ける」といった対策が効果的である、という話を一度は聞いたことがあるでしょう。
確かに、平和な日本では、犯罪者(犯罪グループ)の犯罪行為も稚拙であるため、これまでは、この程度の対策で効果があったかもしれません。しかし残念なことに、グローバル化が進む現在、犯罪者や犯罪グループの行為も国際化し、海外で見られるような犯罪行為も増えてきています。
最近話題になった強盗殺人事件などが良い例です。闇バイトで集められた集団が、人がいる一軒家に堂々と押しかけ、住人を殴打して強盗行為をするなど、よりエスカレートしています。
今後の備えとして、海外の路上強盗やひったくりの例を見てみましょう。下記のように、より大胆で攻撃的になっています。
・格好良いジャケットを着ていた若者に不良グループが近づき、ジャケットがキズつかないように足を撃ってからジャケットを奪い取る
・突然背後からナイフで首を刺し、被害者が傷口を押さえている間にカバンを盗む
・集団で女性に近づき、鉄パイプのようなものでボコボコに殴りつけ、女性が動けなくなったところでカバンを奪い取る
南米などでは、小さい頃から、路上強盗やひったくりの被害にあったら「下を向き、決して犯人の顔を見るな」と教えられます。犯人の顔を見てしまうと、顔を覚えられたと思われ、殺される可能性が高くなるためです。
また、「抵抗せずにカバンや財布を渡せ」とも教えられます。カバンや財布を取られるだけで済むならラッキーだからです。日本のように、「たすき掛けにカバンを持っていればひったくりに遭わない」「自転車のカゴにネットを掛けていれば安心」などといった安易な防犯は、海外では通用しません。
凶悪犯罪の多い海外では、路上強盗やひったくり対策はどのようにされているのでしょうか。また、安易な防犯対策がまかり通っている日本で、犯罪者から身を守る上で本当に必要なことは何でしょうか。