「企画=アイデア」ではない。ヒット企画を考えるのは特別な才能を持った人ではない。企画とは端的に言えば「決めること」。いかにして企画ができる人になるか。フジテレビのテレビ番組「逃走中」の生みの親である敏腕クリエイターが伝授する。※本稿は、高瀬敦也『企画 「いい企画」なんて存在しない』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。
企画=「アイデア」
という誤解
「企画」とは「天から与えられた感性でセンスのあるアイデアを思い付くこと」というイメージを持つ人は多いです。そして「企画業は良いアイデアを思い付くことが仕事だ」と考えている人もいます。
こうした企画に関する誤解は、1980年代のコピーライターブームで注目された企画業のパブリックイメージが元になっていると考えられます。確かに当時は、斬新なアイデアを出すことを生業とし、それが「企画」だと考えられていたことは事実です。しかし、当時と現代では社会の状況は異なり、「企画」をとりまく事情も大きく変わっています。
当時はSNSやスマホはおろか、パソコンすら個人には普及していない時代です。つまり、現代のように誰もが簡単に発信できる時代ではありません。そのため、「企画する」という行為は、マスコミなど特定の業種・職種に就いている人だけが行うものだと認識されていました。
企画を発信できない多くの生活者と、企画を発信する少数の企画業の人の間には大きな隔たりがありました。それゆえ、企画業の目新しいアイデアの部分ばかりが注目され、「企画はアイデアがすべて」なのだという誤解が生じたのではないかと考えています。
一方で現代は企画を発信する場所も、企画する人も増えて競争が激しくなっています。1億総クリエイター時代と言われ、インターネットを中心に誰もが企画を発信することができるようになりました。考えたことはどんどん実行し、その中で「小さくても成果を出した人が生き残っていく」という構図です。
ですから「私はアイデアしか出しません」という姿勢でいると、いつまで経ってもチャンスをつかめず、生き残りが難しくなってしまいます。
アイデアマンといえば広告会社のCMプランナーや、放送業界の放送作家をイメージされる方も多いと思いますが、私が仕事でご一緒した優秀なアイデアマンは、アイデアを出すだけでなく、ディレクションやプロデュース的な働きをし、アウトプット後まで並走します。そうではない人はどんどん淘汰されてきています。