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グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50Photo: Adobe Stock

ロジックツリーとは?

 ロジックツリーとは、MECE(モレなくダブりなく)を意識しながらあるテーマを細かく分解していく過程と結果を示した図を指します。

 全体を大きくいくつかに分け、枝分かれした先をさらに分け……と、多段階にわたって徐々に細かく分解していく形がツリー状に見えることからこう名付けられています。

 マッキンゼーを始めとするコンサルティング会社の実務でよく用いられるツールです。

 前回の記事で紹介したMECEは、比較的足し算型の発想が用いられることが多いですが、ロジックツリーではMECEをより柔軟に解釈して掛け算型やプロセス型に分解するということがよく行われます。

 たとえば以下のようなブレークダウンの方法です。

掛け算型
・売上高を「数量×単価」あるいは「数量×定価×(1-値引き率)」に分解する など
プロセス型
・顧客が購買に至るプロセスをAIDA(Attention (注意)、Interest(興味・関心)、Desire (欲求)、Action (行動))に分解する
・成約率=(訪問件数/引合い件数)×(提案書提出件数/訪問件数)×(成約数/提案書提出件数)に分解する など

 たとえば上記のように「プロセス型の”成約率”」のブレークダウンを意識し、それぞれの指標をKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)化して定点観測しておくと、どの部分が上がったか/下がったかが見極めやすくなり、スムーズなアクションにつながりやすくなります。

 もし他の数字があまり変わらないのに、(成約数/提案書提出件数)の数字が落ちてきていることがわかれば、競争相手に比較して競争力を失いつつある、あるいは提案力が落ちて顧客のニーズに刺さらなくなってきている、といった原因が考えられます。

 問題が起きてからロジックツリーを検討することも重要ですが、それ以前からロジックツリー的発想で定点観測をする方が、よりスピーディにアクションに移せるのです。

事例で確認

 ここではロジックツリーを使って奥さんへの誕生日プレゼント案をたくさん考えてみるという作業を行ってみましょう。

 こうしたアイデアは普通は、「食事、洋服、チケット、アクセサリー……」といったアイデアを5、6個出してすぐにそこから選んでしまうものですが、ここではゼロベースでどんな可能性があるかを考えるべくロジックツリーを使っています(この分析は、実ビジネスにおいてもたとえばアンケートへのプレゼントなどに応用が可能です)。

 図表2-2はあくまで一例ですが、普通であれば10個も出たら上出来といったテーマについて、右端の具体的なアイデアは22個となっています。

 これがロジックツリーを用いて機械的に枝分けをしていくことのパワーです。

 なお、図表2-2は必ずしも枝の先まで同様の切り分け方はしておらず、たとえば「モノ」と「サービス」では3つ目の枝分けは別のものにしています。

 ロジックツリーは「こう切らなくてはならない」という四角四面なルールはないので、テーマに応じて柔軟にMECEの切り口を用いることが肝要です。

用いる場面
・問題解決で、本質的な問題がどこにあるのか(Where)を絞り込む
・問題解決で、その問題が発生している理由(Why)を解明する
・どのような解決策(How)があるかを幅広く考える
「ロジックツリー」を使うコツ・留意点
1.
MECEを用いたロジックツリーの考え方はエレガントに見えるがゆえに、ツリー全体にわたって必要以上にMECEの厳密さに拘ってしまう人がいますがそれはあまり得策ではありません。
特に枝分けの3段目くらいからは、厳密にMECEではなくても、「MECE的」であれば十分なことがほとんどです。費用対効果も意識し、「Good Enough」なレベル感を心がけましょう。
2.
問題解決に向けて「感度のいい切り口」を自分なりにたくさん持っておくことが必要です。現実にどこに問題があるかは、実際に分析してみないと分からないからです。
たとえば仮に自殺者が増えていたとします。その原因を探るために、年齢や性別、職業などで切り分けることで、どこで自殺者が増えているかを分析したところ、明確な傾向が出なかったとします。これでは有効な解決策はうてません。
しかし、もしここで自殺方法別に切り分けて調べたところ、ある特定の自殺方法が増えていることが発見されれば、その自殺方法をとりにくくすることで(たとえば練炭を用いた自殺が増えているなら練炭を入手しにくくするなど)、自殺者数を減らせる可能性があるのです。